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March 15, 2001 Vol. 344 No. 11

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HER2 を過剰発現している転移性乳癌に対する化学療法と抗 HER2 モノクローナル抗体の併用
Use of Chemotherapy plus a Monoclonal Antibody against HER2 for Metastatic Breast Cancer That Overexpresses HER2

D.J. SLAMON AND OTHERS

背景

HER2 遺伝子は増殖因子受容体 HER2 をコードしている遺伝子であるが,乳癌の 25~30%において,この遺伝子が増幅されて HER2 が過剰発現され,腫瘍の攻撃性が増強されている.

方 法

HER2 を過剰発現している転移性乳癌の女性を対象として,HER 2 の遺伝子組換えモノクローナル抗体トラスツズマブ(trastuzumab)の有効性と安全性について評価した.234 例を標準化学療法を単独で行う群,235 例を標準化学療法とトラスツズマブを併用する群に無作為に割り付けた.アントラサイクリン系薬による(術後)補助療法歴のない患者には,ドキソルビシン(36 例にはエピルビシン)とシクロホスファミドの投与を,トラスツズマブとの併用(143 例),または非併用(138 例)で行った.アントラサイクリン系薬による補助療法歴のある患者には,パクリタキセルの単独投与(96 例),またはパクリタキセルとトラスツズマブの併用投与(92 例)を行った.

結 果

化学療法にトラスツズマブを追加したことに関連して,病勢進行までの期間の延長(中央値,7.4 ヵ月間 対 4.6 ヵ月間;p < 0.001),客観的評価による奏効率の向上(50% 対 32%,p < 0.001),奏効期間の延長(中央値,9.1 ヵ月間 対 6.1 ヵ月間;p < 0.001),1 年死亡率の低下(22% 対 33%,p = 0.008),生存期間の延長(中央値,25.1 ヵ月間 対 20.3 ヵ月間;p = 0.046),および死亡のリスクの 20%の低下が得られた.もっとも重大な有害事象は心臓機能不全であり,アントラサイクリン+シクロホスファミド+トラスツズマブ投与群では 27%に発現し,アントラサイクリン+シクロホスファミドの化学療法のみ投与群では 8%,パクリタキセル+トラスツズマブ投与群では 13%,パクリタキセル単剤投与群では 1%に発現した.このような心毒性は重症になる可能性があり,一部の症例では生命を脅かすほど重篤であったが,一般的には,これらの症状は標準的な医療管理によって改善した.

結 論

トラスツズマブは,HER2 を過剰発現している転移性乳癌において,第一選択の化学療法の臨床有益性を増大させる.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2001; 344 : 783 - 92. )