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June 4, 2009 Vol. 360 No. 23

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インターロイキン-1 受容体拮抗物質の欠損に伴う自己炎症性疾患
An Autoinflammatory Disease with Deficiency of the Interleukin-1–Receptor Antagonist

I. Aksentijevich and Others

背景

自己炎症性疾患は,感染,自己抗体価の上昇,自己反応性 T 細胞といった所見を伴わずに炎症を起こす.インターロイキン-1 受容体拮抗物質をコードする遺伝子である IL1RN の変異に起因する,主に皮膚や骨が侵される疾患について報告する.

方 法

新生児期に無菌性多発性骨髄炎,骨膜炎,膿疱症を発症した 6 家系の小児 9 例を検討した.最初の患児が組換え型インターロイキン-1 受容体拮抗薬であるアナキンラ(anakinra)を用いた経験的治療に反応したことから,IL1RN を含むインターロイキン-1 経路の遺伝子の変異の有無,蛋白の変化やその機能について検討した.

結 果

カナダ・ニューファンドランド州の 1 家族,オランダの 3 家族,レバノンの 1 血族家族,プエルトリコの 1 非血族家族の計 9 例の患児において,IL1RN のホモ接合性変異を同定した.プエルトリコの患児 1 例は,IL1RN のほかインターロイキン-1 ファミリーメンバー 5 つを含むホモ接合性ゲノム欠失を有していた.各出身国の対照者の DNA サンプルを調査した結果,これらの変異のうち少なくとも 3 つは創始者変異であることが示された.また,親族のヘテロ接合性保因者に症状はなく,in vitro でサイトカインの異常は認められなかった.IL1RN の変異によって,分泌されない不完全な蛋白が産生され,その結果インターロイキン-1β 刺激に対する細胞の反応が亢進したのである.アナキンラで治療された患児は速やかに反応した.

結 論

われわれは,IL1RN の変異に起因するこの常染色体劣性遺伝の自己炎症性疾患に対して,インターロイキン-1 受容体拮抗物質欠損症(deficiency of the interleukin-1-receptor antagonist:DIRA)という用語を提案する.インターロイキン-1 受容体拮抗物質の非存在下では,インターロイキン-1 は過剰に作用し,皮膚や骨を侵す致死的な全身性炎症をきたす.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00059748)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2009; 360 : 2426 - 37. )