November 12, 2009 Vol. 361 No. 20
腎動脈狭窄に対する血行再建術と内科的治療の比較
Revascularization versus Medical Therapy for Renal-Artery Stenosis
The ASTRAL Investigators
動脈硬化性腎血管疾患に対して,腎動脈の経皮的血行再建を行うと開存性が改善するが,臨床的利益に関するエビデンスは限られている.
無作為化非盲検試験で,動脈硬化性腎血管疾患患者 806 例を,内科的治療に腎血行再建術を併用する群と,内科的治療のみを行う群のいずれかに割り付けた.主要転帰は腎機能とし,血清クレアチニン値の逆数(クレアチニンクリアランスと直線的な関連を示す指標)で評価した.副次的転帰は,血圧,腎イベント・主要心血管イベントまでの期間,死亡率とした.追跡期間の中央値は 34 ヵ月であった.
5 年間で,腎障害の進行速度(血清クレアチニン値の逆数の傾きで示したもの)は血行再建群 -0.07×10-3 L/μmol/年,内科的治療群 -0.13×10-3 L/μmol/年であり,その差は 0.06×10-3 L/μmol/年で血行再建の優越性を認めた(95%信頼区間 [CI] -0.002~0.13,P=0.06).同期間における血清クレアチニンの平均値は,血行再建群のほうが内科的治療群より 1.6 μmol/L 低かった(95% CI -8.4~5.2 [0.02 mg/dL,95% CI -0.10~0.06]).収縮期血圧には有意な群間差は認められず,拡張期血圧の低下は血行再建群のほうが内科的治療群より小さかった.腎イベント発生率(血行再建群のハザード比 0.97,95% CI 0.67~1.40,P=0.88),主要心血管イベント発生率(ハザード比 0.94,95% CI 0.75~1.19,P=0.61),死亡率(ハザード比 0.90,95% CI 0.69~1.18,P=0.46)は両群で同等であった.血行再建に伴う重篤な合併症は 23 例に認められ,これには死亡 2 例,足趾または肢の切断 3 例が含まれた.
動脈硬化性腎血管疾患患者に対する血行再建はリスクが高く,それに見合った臨床的利益は認められなかった.(Current Controlled Trials 番号:ISRCTN59586944)