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February 24, 2011 Vol. 364 No. 8

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小児ヘモグロビン H 症の不均一性
Heterogeneity of Hemoglobin H Disease in Childhood

A. Lal and Others

背景

新生児スクリーニング時や乳児期の早期診断により,α サラセミアの亜型の一つであるヘモグロビン H 症の自然経過の観察が可能になった.

方 法

α グロビン遺伝子 4 個中 3 個の欠失に起因するヘモグロビン H 症(HbH)患者と,α グロビン遺伝子 2 個の欠失と Constant Spring 変異に起因するヘモグロビン H Constant Spring(HCS)患者の経時的臨床データを解析した.

結 果

ヘモグロビン H 症患者 86 例を同定した(48 例は新生児スクリーニングによる).内訳は,HbH 患者 60 例(70%),HCS 患者 23 例(27%),その他の非欠失型ヘモグロビン H 症患者 3 例(3%)であった.親の民族的背景は,アジア人 81%,ヒスパニック 5%,アフリカ系アメリカ人 3%で,混合人種は 10%であった.HbH 患者の 15%は,片親または両親がアフリカ系アメリカ人であった.HbH 患者の発育は 10 歳まで正常であったが,HCS 患者では発育遅延が乳児期から認められた.HCS 患者では,すべての年齢層で貧血の重症度が高かった(P<0.001).感染症に伴う,緊急輸血を必要とするような貧血の急性増悪は HCS 患者でみられたが,HbH 患者ではみられなかった.20 歳までに輸血を 1 回以上受ける確率は,HbH 患者 3%,HCS 患者 80%であった(P<0.001).HCS 患者では,乳児の 13%と 6 歳未満児の 50%で輸血が行われた.脾臓摘出はヘモグロビン値の有意な改善(P=0.01)と,輸血回数の減少に関連していた.

結 論

HCS は,発熱性疾患時に生命に関わる貧血を発症するリスクの高い,独立したサラセミア症候群と認識されるべきである.HbH は感染症に伴う重症貧血の発症率を上昇させず,輸血を行うことなく管理された.これらの疾患を有する患者の多くが混合型の民族的背景をもっていたことから,ヘモグロビン H 症のリスクは低いと考えられている集団で新生児スクリーニングを拡大する必要性があることが強調される.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2011; 364 : 710 - 8. )