The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

January 26, 2012 Vol. 366 No. 4

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

HER2 陰性乳癌に対する術前補助化学療法とベバシズマブ
Neoadjuvant Chemotherapy and Bevacizumab for HER2-Negative Breast Cancer

G. von Minckwitz and Others

背景

抗血管内皮増殖因子 A モノクローナル抗体ベバシズマブは,ヒト上皮増殖因子受容体 2(HER2)陰性転移性乳癌の患者において臨床的有効性を示している.この研究では,早期乳癌患者を対象に,術前補助化学療法にベバシズマブを追加することの有効性と安全性を評価した.有効性は,病理学的完全奏効率(乳房と腋窩リンパ節に浸潤性・乳管内病変がない状態)によって評価した.

方 法

触診による腫瘍径の中央値 40 mm の患者 1,948 例を,エピルビシン+シクロホスファミド投与後にドセタキセルを投与する術前補助化学療法に加えベバシズマブを併用する群と,併用しない群のいずれかに無作為に割り付けた.未治療の HER2 陰性乳癌患者で,腫瘍径が大きいか,ホルモン受容体陰性乳癌,あるいはリンパ節が触知されるセンチネルリンパ節生検陽性のホルモン受容体陽性乳癌を有し,心血管リスクおよび出血リスクが上昇していない患者を適格とした.

結 果

全体の病理学的完全奏効率は,エピルビシン+シクロホスファミド投与後にドセタキセルを投与した群で 14.9%,ベバシズマブ併用でエピルビシン+シクロホスファミド投与後にドセタキセルを投与した群で 18.4%であった(ベバシズマブ併用群のオッズ比 1.29,95%信頼区間 1.02~1.65,P=0.04).病理学的完全奏効率は,トリプルネガティブ乳癌の 663 例においてそれぞれ 27.9%,39.3%(P=0.003),ホルモン受容体陽性乳癌の 1,262 例において 7.8%,7.7%(P=1.00)であった.両群で 66.6%において乳房温存術が可能であった.ベバシズマブの追加は,術前補助療法単独と比較して,グレード 3 または 4 の毒性作用(発熱性好中球減少症,粘膜炎,手足症候群,感染,高血圧)の発現率の上昇に関連したが,手術合併症の発現率は同程度であった.

結 論

術前補助化学療法にベバシズマブを追加することにより,HER2 陰性早期乳癌患者の病理学的完全奏効率は有意に上昇した.有効性は主にトリプルネガティブ乳癌の患者に限られ,これらの患者においては病理学的完全奏効が長期転帰に関する信頼度の高い予測因子であると考えられる.(ドイツの Sanofi-Aventis 社,Roche 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 番号:NCT00567554)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2012; 366 : 299 - 309. )