March 14, 2013 Vol. 368 No. 11
乳癌に対する放射線療法後の女性における虚血性心疾患のリスク
Risk of Ischemic Heart Disease in Women after Radiotherapy for Breast Cancer
S.C. Darby and Others
乳癌に対する放射線療法では,偶発的に心臓が電離放射線に被曝することが多い.こうした被曝が,その後の虚血性心疾患のリスクに与える影響は不明である.
スウェーデンとデンマークで,1958~2001 年に乳癌に対する放射線療法を受けた女性 2,168 例を対象に,重大な冠動脈イベント(心筋梗塞,冠血行再建,または虚血性心疾患による死亡)に関する人口ベースの症例対照研究を行った.内訳は,重大な冠動脈イベントが発生した女性 963 例,対照 1,205 例である.各患者の情報は病院の記録から入手した.心臓全体および左前下行枝への平均照射線量は,放射線療法の記録から推定した.
心臓全体への平均照射線量の全体での平均値は 4.9 Gy(0.03~27.72)であった.重大な冠動脈イベントの発生率は,心臓への平均照射線量 1 Gy あたり 7.4%(95%信頼区間 2.9~14.5,P<0.001)ずつ線形的に上昇し,明らかな閾値はなかった.上昇は放射線療法後 5 年以内に始まり,20 年目以降も継続した.1 Gy あたりの重大な冠動脈イベントの発生率の比例的な上昇は,放射線療法施行時に心疾患の危険因子を有していた女性と有していなかった女性とで同様に認められた.
乳癌に対する放射線療法時の心臓の電離放射線被曝により,その後の虚血性心疾患の発生率が上昇した.この上昇は心臓への平均照射線量に比例し,被曝後数年以内に始まり,20 年以上継続する.放射線療法による絶対リスクの増加は,心疾患の危険因子をすでに有していた女性のほうが,有していなかった女性よりも大きかった.(英国がん研究所から研究助成を受けた.)