December 19, 2013 Vol. 369 No. 25
骨髄増殖性腫瘍におけるカルレティキュリンの体細胞変異
Somatic Mutations of Calreticulin in Myeloproliferative Neoplasms
T. Klampfl and Others
本態性血小板血症または原発性骨髄線維症を有する患者の約 50~60%にはヤヌスキナーゼ 2 遺伝子(JAK2)の変異があり,さらに 5~10%にはトロンボポエチン受容体遺伝子(MPL)の活性化変異がある.これまでのところ,残る 30~45%の患者に特異的な分子マーカーは同定されていない.
JAK2,MPL の変異がない原発性骨髄線維症患者 6 例において,後天性の体細胞変異を同定することを目的として全エクソーム配列決定を行った.次に,骨髄性腫瘍患者のコホートにおいてカルレティキュリン(calreticulin)をコードする CALR の再配列決定を行った.
全エクソーム配列決定を行った患者全例で,CALR のエクソン 9 に挿入または欠失が検出された.骨髄増殖性腫瘍患者の1,107 検体の再配列決定により,真性多血症では CALR 変異がないことが示された.本態性血小板血症と原発性骨髄線維症において,CALR 変異と JAK2 および MPL の変異とは相互排他的であった.JAK2 または MPL の変異のない本態性血小板血症または原発性骨髄線維症の患者のうち,本態性血小板血症患者の 67%,原発性骨髄線維症患者の 88%で CALR 変異が検出された.計 36 種類の挿入または欠失すべてが,同じ選択的リーディングフレームへのフレームシフトを引き起こし,変異カルレティキュリンに新たな C 末端ペプチドを生成させていることが同定された.もっとも頻度の高い CALR 欠損多様体の過剰発現は,in vitro では,未知の機序によりシグナル伝達性転写因子 5(STAT5)が活性化され,サイトカイン非依存性の細胞増殖をもたらした.変異 CALR を有する患者は,変異 JAK2 を有する患者よりも血栓症リスクが低く,全生存期間が長かった.
JAK2,MPL の変異を伴わない本態性血小板血症または原発性骨髄線維症の患者のほとんどは,CALR の体細胞変異を有していた.このような患者は,JAK2 V617F 変異を有する患者と比較して緩徐な臨床経過をたどった.(MPN 研究財団,イタリア癌研究協会から研究助成を受けた.)