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January 23, 2014 Vol. 370 No. 4

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軽度~中等度のアルツハイマー病に対するソラネズマブの第 3 相試験
Phase 3 Trials of Solanezumab for Mild-to-Moderate Alzheimer’s Disease

R.S. Doody and Others

背景

アルツハイマー病は,βアミロイド斑,神経原線維変化,グリオーシス,神経細胞消失を特徴とする.ヒト化モノクローナル抗体ソラネズマブ(solanezumab)は可溶型アミロイドに選択的に結合し,前臨床研究ではアミロイドの脳からの除去を促進した.

方 法

軽度~中等度のアルツハイマー病患者を対象とする 2 つの第 3 相二重盲検試験を行った.EXPEDITION 1 では 1,012 例を,EXPEDITION 2 では 1,040 例をプラセボ群またはソラネズマブ群(400 mg 静注)に無作為に割り付け,4 週ごとに 18 ヵ月間投与した.主要評価項目は,アルツハイマー病評価尺度の 11 項目の認知機能下位尺度(ADAS-cog11)スコア(0~70 で,スコアが高いほど認知障害が大きいことを示す),およびアルツハイマー病共同研究の日常生活動作評価尺度(ADCS-ADL)スコア(0~78 で,スコアが低いほど機能が悪化していることを示す)における,ベースラインから 80 週までの変化とした.EXPEDITION 1 のデータを解析後,EXPEDITION 2 の主要評価項目を修正し,軽度のアルツハイマー病患者における,アルツハイマー病評価尺度の 14 項目の認知機能下位尺度(ADAS-cog14)スコア(0~90 で,スコアが高いほど障害が大きいことを示す)の変化とした.

結 果

いずれの研究でも主要評価項目に有意な改善は認められなかった.モデル化したベースラインからの変化の群間差(ソラネズマブ群-プラセボ群)は,EXPEDITION 1 では ADAS-cog11 スコアが-0.8 ポイント(95%信頼区間 [CI] -2.1~0.5,P=0.24),ADCS-ADL スコアが -0.4 ポイント(95% CI -2.3~1.4,P=0.64),EXPEDITION 2 ではそれぞれ -1.3 ポイント(95% CI -2.5~0.3,P=0.06),1.6 ポイント(95% CI -0.2~3.3,P=0.08)であった.ADAS-cog14 スコアの変化の群間差は,軽度アルツハイマー病患者では -1.7 ポイント(95% CI -3.5~0.1,P=0.06),中等度アルツハイマー病患者では -1.5 ポイント(95% CI -4.1~1.1,P=0.26)であった.総合した安全性データセットにおいて,浮腫または出血を示すアミロイド関連画像異常の発生率は,浮腫がソラネズマブ群 0.9%,プラセボ群 0.4%(P=0.27),出血がそれぞれ 4.9%,5.6%(P=0.49)であった.

結 論

アミロイドに結合するヒト化モノクローナル抗体ソラネズマブによって,認知機能および機能的能力は改善されなかった.(Eli Lilly 社から研究助成を受けた.EXPEDITION 1 ClinicalTrials.gov 番号:NCT00905372,EXPEDITION 2 ClinicalTrials.gov 番号:NCT00904683)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2014; 370 : 311 - 21. )