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October 8, 2015 Vol. 373 No. 15

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心臓手術における遠隔虚血プレコンディショニングの多施設共同試験
A Multicenter Trial of Remote Ischemic Preconditioning for Heart Surgery

P. Meybohm and Others

背景

心臓手術を受ける患者に遠隔虚血プレコンディショニング(RIPC)を行うことで,虚血・再灌流障害のバイオマーカーが低下することが報告されているが,臨床転帰についてははっきりしていない.

方 法

プロポフォール静注による全身麻酔下で,人工心肺を必要とする待期的心臓手術が予定されている成人を対象として,上肢に RIPC を行った場合と偽処置を行った場合とを比較する多施設共同前向き二重盲検無作為化対照試験を行った.主要評価項目は,退院時までに発生した死亡,心筋梗塞,脳卒中,急性腎不全の複合とした.副次的評価項目は,主要評価項目の各項目の,90 日の時点での発生などとした.

結 果

1,403 例を無作為化した.1,385 例(RIPC 群 692 例,偽 RIPC 群 693 例)を最大の解析対象集団とした.複合主要評価項目の発生率に群間で有意差は認められず(RIPC 群 99 例 [14.3%],偽 RIPC 群 101 例 [14.6%];P=0.89),また,死亡(それぞれ 9 例 [1.3%]と 4 例 [0.6%],P=0.21),心筋梗塞(47 例 [6.8%]と 63 例 [9.1%],P=0.12),脳卒中(14 例 [2.0%]と 15 例 [2.2%],P=0.79),急性腎不全(42 例 [6.1%]と 35 例 [5.1%],P=0.45)の各項目についても群間で有意差は認められなかった.per-protocol 解析においても結果は同様であった.いずれのサブグループ解析においても治療効果は認められなかった.RIPC 群と偽 RIPC 群とのあいだで,トロポニン放出量,人工呼吸器装着期間,集中治療室入室期間・入院期間,心房細動の新規発症,術後せん妄の発生率に有意差は認められなかった.RIPC に関連する有害事象は認められなかった.

結 論

待期的心臓手術を受ける患者において,プロポフォールによる麻酔下で上肢 RIPC を行っても,意義のある利益は認められなかった.(ドイツ研究振興協会から研究助成を受けた.RIPHeart 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01067703)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2015; 373 : 1397 - 407. )