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March 17, 2016 Vol. 374 No. 11

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より安全な処方のための教育,情報科学,金銭的インセンティブに関する研究
Safer Prescribing — A Trial of Education, Informatics, and Financial Incentives

T. Dreischulte and Others

背景

プライマリケアにおいて,高リスクの処方と,予防可能な薬剤関連合併症はよくみられる.プライマリケア医による高リスク処方とそれに関連する臨床転帰の発生率が,複合的介入によって低下するかどうかを評価した.

方 法

スコットランドのテイサイド州で行われたクラスター無作為化ステップウェッジ研究において,対象としたプライマリケア診療を,専門家による教育,振り返りを容易にする情報科学,適切性を検討する目的で患者の病歴の見直しをさせるための金銭的インセンティブから成る 48 週間の介入について,開始日の異なる 10 の群に無作為に割り付けた.主要転帰は,非ステロイド抗炎症薬(NSAID)または特定の抗血小板薬の高リスク処方に関する 9 つの指標(たとえば慢性腎臓病患者に対する NSAID の処方や,胃粘膜保護薬なしでの NSAID と抗凝固薬の同時処方)のいずれかへの患者の曝露とした.事前に規定した副次的転帰は,関連する入院の発生などとした.解析は intention-to-treat の原則に従って行い,日付のクラスタリングを考慮するために混合効果モデルを用いた.

結 果

34 の診療を無作為化し,うち 33 の診療が研究を完了した.介入前の期間に 1 回以上の時点で危険因子を有していた 33,334 例のデータと,介入期間中の 1 回以上の時点で危険因子を有していた 33,060 例についてデータを解析した.標的とした高リスク処方は,介入直前の 3.7%(危険因子を有する患者 29,537 例中 1,102 例)から,介入終了時には 2.2%(30,187 例中 674 例)へと,有意に低下した(補正オッズ比 0.63,95%信頼区間 [CI] 0.57~0.68,P<0.001).消化管潰瘍・出血による入院率は,介入前の期間から介入期間中にかけて有意に低下し(10,000 人年あたり 55.7 件から 37.0 件に減少,率比 0.66,95% CI 0.51~0.86,P=0.002),心不全による入院率も有意に低下したが(10,000 人年あたり 707.7 件から 513.5 件に減少,率比 0.73,95% CI 0.56~0.95,P=0.02),急性腎障害による入院率の低下は有意ではなかった(それぞれ 10,000 人年あたり 101.9 件から 86.0 件に減少,率比 0.84,95% CI 0.68~1.09,P=0.19).

結 論

専門家による教育,情報科学,金銭的インセンティブを組み合わせた複合的介入により,抗血小板薬および NSAID の高リスク処方の発生率が低下し,臨床転帰が改善された可能性がある.(スコットランド政府主席科学官室から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01425502)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2016; 374 : 1053 - 64. )