March 24, 2016 Vol. 374 No. 12
ANGPTL4 の不活性化多様体と冠動脈疾患のリスク
Inactivating Variants in ANGPTL4 and Risk of Coronary Artery Disease
F.E. Dewey and Others
血中トリグリセリド値が正常より高いことは,虚血性心血管疾患の危険因子である.リポ蛋白リパーゼはアンジオポエチン様 4(ANGPTL4)によって阻害される酵素であるが,その活性化により血中トリグリセリド値が低下することが示されている.
DiscovEHR ヒト遺伝学研究のヨーロッパ系を中心とする参加者 42,930 例の検体において,ANGPTL4 のエクソンの配列を決定した.脂質値と,ミスセンス E40K 多様体(血漿トリグリセリド低値に関連することが示されている)およびその他の不活性化変異との関連を検証した.続いて,冠動脈疾患患者 10,552 例と対照 29,223 例において,冠動脈疾患と,E40K 多様体およびその他の不活性化変異との関連を検証した.ヒト抗 ANGPTL4 モノクローナル抗体の脂質値に対する影響も,マウスとサルで検証した.
E40K 多様体のヘテロ接合体 1,661 例,ホモ接合体 17 例と,ANGPTL4 の他の単一アレル不活性化変異 13 個を有する 75 例を同定した.E40K 多様体保有者は,非保有者と比較して,トリグリセリド値が 13%低く,高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール値が 7%高かった.また,E40K 多様体保有者は,非保有者と比較して,冠動脈疾患を有する割合が有意に低かった(オッズ比 0.81,95%信頼区間 0.70~0.92,P=0.002).K40 ホモ接合体では,ヘテロ接合体と比較して,トリグリセリド値が著しく低く,HDL コレステロール値が高かった.他の不活性化変異の保有者でも,非保有者と比較して,トリグリセリド値が低く,HDL コレステロール値が高く,冠動脈疾患を有する割合が低かった.マウスとサルの Angptl4 をモノクローナル抗体で阻害すると,トリグリセリド値が低下した.
ANGPTL4 の E40K およびその他の不活性化変異の保有者は,非保有者と比較して,トリグリセリド値が低く,冠動脈疾患のリスクが低かった.マウスとサルの Angptl4 を阻害した場合にも,トリグリセリド値に同様の低下が認められた.(Regeneron Pharmaceuticals 社から研究助成を受けた.)