心臓手術後の心房細動に対する心拍数調節と洞調律維持との比較
Rate Control versus Rhythm Control for Atrial Fibrillation after Cardiac Surgery
A.M. Gillinov and Others
心臓手術後の心房細動は,死亡率,合併症発症率,入院率の上昇に関連している.術後心房細動を発症し,状態が安定している患者に対する最善の初期治療戦略は,心拍数調節であるのか洞調律維持であるのか,議論が続いている.
術後に心房細動を新規発症した患者を,心拍数調節群と洞調律維持群に無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,無作為化後 60 日以内の総入院日数とし,Wilcoxon の順位和検定により評価した.
術前に登録した 2,109 例のうち,695 例(33.0%)が術後心房細動を発症し,523 例を無作為化した.総入院日数は,心拍数調節群と洞調律維持群で同程度であった(中央値はそれぞれ 5.1 日,5.0 日;P=0.76).死亡率に群間で有意差は認められず(P=0.64),血栓塞栓イベントと出血イベントを含む重篤な有害事象全体の発現率にも有意差は認められなかった(心拍数調節群 100 人月あたり 24.8 件,洞調律維持群 100 人月あたり 26.4 件;P=0.61).各群の約25%が割り付けられた治療から逸脱した.その主な理由は,薬剤無効(心拍数調節群)と,アミオダロンの副作用または薬物有害反応(洞調律維持群)であった.60 日の時点で,直近の 30 日間に心房細動を発症せず洞調律が安定していた患者の割合は,心拍数調節群 93.8%,洞調律維持群 97.9%であり(P=0.02),退院した時点から無作為化後 60 日の時点までに心房細動を発症しなかった割合は,それぞれ 84.2%,86.9%であった(P=0.41).
術後心房細動の治療戦略である心拍数調節と洞調律維持は,発症後 60 日の時点での入院日数が同等であること,合併症発症率が同程度であること,心房細動が持続している割合が同程度に低いことに関連した.いずれの戦略にも,もう一方に対する正味の臨床的優越性は認められなかった.(米国国立衛生研究所,カナダ保健研究機構から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02132767)