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January 21, 2016 Vol. 374 No. 3

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II 期・III 期結腸癌の予後予測バイオマーカーとしての CDX2
CDX2 as a Prognostic Biomarker in Stage II and Stage III Colon Cancer

P. Dalerba and Others

背景

高リスクの II 期結腸癌を同定することは,術後に補助治療を要する患者の選択に重要である.幹細胞と前駆細胞に由来する,マイクロアレイに基づく多重遺伝子発現シグネチャーは有望であるが,これらを臨床診療で用いることは困難である.

方 法

新たな生命情報学的アプローチを用いて,遺伝子発現アレイで結腸上皮分化のバイオマーカーを探索し,候補遺伝子に臨床用の診断検査が利用可能かどうかで順位を付けた.II 期または III 期の結腸癌患者の独立した後ろ向きコホートのサブグループ解析により,第 1 位の候補遺伝子と,無病生存および補助化学療法による利益との関連を検討した.

結 果

スクリーニング検査では転写因子 CDX2 が第 1 位であった.腫瘍検体 2,115 検体中 87 検体(4.1%)では,CDX2 の発現が認められなかった.患者 466 例の探索データセットでは,5 年無病生存率は,CDX2 陰性結腸癌患者 32 例(全体の 6.9%)のほうが,CDX2 陽性結腸癌患者 434 例(93.1%)よりも低かった(再発のハザード比 3.44,95%信頼区間 [CI] 1.60~7.38,P=0.002).314 例の検証データセットでは,5 年無病生存率は,CDX2 蛋白陰性結腸癌患者 38 例(全体の 12.1%)のほうが,CDX2 蛋白陽性結腸癌患者 276 例(87.9%)よりも低かった(ハザード比 2.42,95% CI 1.36~4.29,P=0.003).これらの結果は,この 2 つのサブグループのいずれにおいても患者の年齢,性別,腫瘍の病期・悪性度とは独立していた.II 期結腸癌患者においては,5 年無病生存率に,探索データセット(CDX2 陰性 15 例では 49% 対 CDX2 陽性 191 例では 87%,P=0.003)と検証データセット(CDX2 陰性 15 例では 51% 対 CDX2 陽性 106 例では 80%,P=0.004)の両方で有意差が認められた.すべての患者コホートを統合したデータベースにおいて,5 年無病生存率は,CDX2 陰性 II 期結腸癌で補助化学療法を受けた 23 例のほうが,補助化学療法を受けなかった 25 例よりも高かった(91% 対 56%,P=0.006).

結 論

CDX2 発現の欠損から,補助化学療法により利益を得ることができると考えられる,高リスクの II 期結腸癌患者のサブグループが同定された.(全米総合がんネットワーク,米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2016; 374 : 211 - 22. )