B 型肝炎ウイルス量が高い妊娠女性の母子感染予防のためのテノホビル
Tenofovir to Prevent Hepatitis B Transmission in Mothers with High Viral Load
C.Q. Pan and Others
B 型肝炎ウイルス(HBV)母子感染予防を目的とする妊娠中のテノホビルジソプロキシルフマル酸塩(TDF)投与に関するデータは少ない.
B 型肝炎 e 抗原(HBeAg)が陽性であり,HBV DNA 量が 200,000 IU/mL を超える妊娠女性 200 例を対象に試験を行った.対象を,抗ウイルス薬治療を用いない通常のケアを行う群と,TDF(300 mg を 1 日 1 回経口投与)を妊娠 30~32 週から分娩後 4 週まで投与する群に 1:1 の割合で無作為に割り付け,分娩後 28 週まで追跡した.出生した児全員に免疫学的予防を行った.主要評価項目は,母子感染率と先天異常発生率とした.副次的評価項目は,TDF の安全性,分娩時の HBV DNA 量が 200,000 IU/mL 未満の母親の割合,分娩後 28 週の時点での HBeAg または B 型肝炎表面抗原の消失または陽転とした.
分娩時の HBV DNA 量が 200,000 IU/mL 未満であったのは,対照群では 2%(100 例中 2 例)であったのに対し,TDF 群では 68%(97 例中 66 例)であった(P<0.001).分娩後 28 週の時点で,母子感染率は TDF 群のほうが対照群よりも有意に低いことが,intention-to-treat 解析(5% [97 例中 5 例] 対 18% [100 例中 18 例],P=0.007)と per-protocol 解析(0% 対 7% [88 例中 6 例],P=0.01)の両方で認められた.母子の安全性プロファイルは,先天異常発生率(TDF 群 2% [95 例中 2 例] ,対照群 1% [88 例中 1 例];P=1.00)をはじめとして 2 群で同程度であったが,TDF 群の女性ではクレアチンキナーゼの上昇がより多く認められた.TDF 群の女性が服用を中止後,TDF 群では,正常範囲を上回るアラニンアミノトランスフェラーゼの上昇が対照群よりも多く認められた(45% [97 例中 44 例] 対 30% [100 例中 30 例],P=0.03).女性の HBV 血清学的転帰に群間で有意差は認められなかった.
妊娠第 3 期に HBV DNA 量が 200,000 IU/mL を超える HBeAg 陽性の妊娠女性のコホートにおいて,母子感染率は,TDF を投与した女性では,抗ウイルス薬治療を用いない通常ケアを行った女性よりも低かった.(Gilead Sciences 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01488526)