The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

June 30, 2016 Vol. 374 No. 26

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

皮質骨の脆弱性 ― パイル病における sFRP4 欠損から得られた洞察
Cortical-Bone Fragility — Insights from sFRP4 Deficiency in Pyle’s Disease

P.O. Simsek Kiper and Others

背景

皮質骨の脆弱性は,非椎体骨折に関連する,骨粗鬆症によくみられる特徴である.皮質骨の恒常性の調節はこれまで解明困難であった.骨格の遺伝性疾患の研究により,まれな疾患とよくみられる骨格の疾患の治療に,実験的なアプローチを積極的に試していくための洞察が得られる可能性がある.

方 法

皮質骨の菲薄化,四肢変形,骨折を特徴とする遺伝性疾患であるパイル病の 4 例を評価するために,2 例にエクソーム解析を,2 例にサンガー法による配列決定を行った.1 つの候補遺伝子が同定されたあと,その表現型をもつノックアウトマウスモデルを作製し,骨構造の変化の原因となる機構を検討した.

結 果

全例に,可溶性 Wnt 阻害因子である分泌型 frizzled 関連蛋白質 4 をコードする遺伝子 SFRP4 に,両アレル性短縮型変異が検出された.Sfrp4 欠損マウスでは,パイル病患者と同様,海綿骨と皮質骨の両成分で Wnt と骨形成蛋白質(BMP)のシグナル伝達が異なって調節された結果として,海綿骨量が増加し,皮質骨が異常に菲薄化していた.Sfrp4 欠損マウスに,可溶性 Bmp2 受容体(RAP-661)または抗スクレロスチン抗体を投与すると,皮質骨の欠損は補正された.

結 論

今回の研究で,パイル病が sFRP4 の欠損によって引き起こされること,皮質骨と海綿骨の恒常性が異なる機構で制御されること,皮質骨が適切な厚みと安定性を獲得するには sFRP4 に媒介される Wnt と BMP シグナル伝達のクロストーク制御が不可欠であることが示された.(スイス国立財団,米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2016; 374 : 2553 - 62. )