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March 10, 2016 Vol. 374 No. 10

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HLA 不適合ドナーからの生体腎移植による生存延長
Survival Benefit with Kidney Transplants from HLA-Incompatible Live Donors

B.J. Orandi and Others

背景

移植件数の多い単一施設からの報告では,HLA 不適合ドナーからの生体腎移植を受けた場合,その後死体腎移植を受けたかどうかにかかわらず待機を継続した場合と比較して,生存が延長することが示唆されている.この知見に一般化の可能性があるのかどうかは不明である.

方 法

22 施設で HLA 不適合ドナーから生体腎移植を受けた 1,025 例を,マッチさせた対照群として,待機を継続し一部はその後死体腎移植を受けた患者群(待機/移植対照群)と,待機を継続し移植は受けなかった患者群(待機のみ対照群)を設定することで,生存延長を推定した.この研究では,移植件数がもっとも多い施設の患者を含めたデータと,除外したデータを分析した.

結 果

HLA 不適合ドナーから生体腎移植を受けた患者の生存率は,対照の 2 群と比較して,1 年の時点(95.0%に対し,待機/移植対照群 94.0%,待機のみ対照群 89.6%),3 年の時点(91.7%に対し,それぞれ 83.6%,72.7%),5 年の時点(86.0%に対し,それぞれ 74.4%,59.2%),8 年の時点(76.5%に対し,それぞれ 62.9%,43.9%)のいずれにおいても高かった(2 つの対照群とのすべての比較において P<0.001).8 年の時点では,ドナー特異的抗体量にかかわらず有意な生存延長が認められた.すなわち,Luminex アッセイで抗 HLA 抗体陽性だがフローサイトメトリーでクロスマッチ陰性の場合は,HLA 不適合ドナーから生体腎移植を受けた患者の生存率は 89.2%であったのに対し,待機/移植対照群では 65.0%,待機のみ対照群では 47.1%であり,フローサイトメトリーでクロスマッチ陽性だが細胞傷害性クロスマッチ陰性の場合は,生体腎移植を受けた患者の生存率は 76.3%であったのに対し,2 つの対照群ではそれぞれ 63.3%,43.0%であり,細胞傷害性クロスマッチ陽性の場合は,71.0%であったのに対し,それぞれ 61.5%,43.7%であった.これらの結果は,移植件数がもっとも多い施設の患者を除外しても変化しなかった.

結 論

この多施設共同研究では,HLA 不適合ドナーからの生体腎移植を受けた患者において,移植を受けなかった患者,死体腎移植を待機した患者と比較して,有意な生存延長が認められたという単一施設のエビデンスの妥当性が確認された.(米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所から研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2016; 374 : 940 - 50. )