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October 13, 2016 Vol. 375 No. 15

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乳癌の腫瘍径,過剰診断,マンモグラフィ検診の有効性
Breast-Cancer Tumor Size, Overdiagnosis, and Mammography Screening Effectiveness

H.G. Welch and Others

背景

マンモグラフィ検診の目的は,小さな悪性腫瘍を,症状を引き起こすほど大きくなる前に発見することである.そのため,有効な検診が行われれば,小さな腫瘍の発見数が増加し,経時的に大きな腫瘍の発見数が減少していくはずである.

方 法

1975~2012 年のサーベイランス・疫学・最終結果(SEER)プログラムのデータを用いて,40 歳以上の女性における乳癌の腫瘍径の分布と腫瘍径別の発生率を算出した.続いて,腫瘍径別の乳癌致死率を,マンモグラフィ検診が広く行われる前のベースライン期(1975~79 年)と,10 年間の追跡データが入手できる直近の期間(2000~02 年)の 2 つの期間について算出した.

結 果

マンモグラフィ検診の導入後,発見された乳腺腫瘍に占める小さな腫瘍(<2 cm の浸潤癌,または非浸潤癌)の割合は 36%から 68%へと上昇し,大きな腫瘍(≧2 cm の浸潤癌)の割合は 64%から 32%へと低下した.しかし,この傾向は,大きな腫瘍の発生率が大幅に低下(検診導入後に観察された癌症例数は検診導入前と比較して 100,000 人あたり 30 個減少)したためというよりは,小さな腫瘍の発見率が大幅に上昇(100,000 人あたり 162 個増加)したためであった.基礎にある疾患負荷は変化していないと仮定すると,追加的に診断された 100,000 人あたり 162 個の小さな腫瘍のうち,進行して大きくなると予測されるのは 30 個にすぎず,残りの 132 個は過剰診断であったことが示唆される(つまり,臨床症状を引き起こすことがなかったであろう癌症例が検診で発見された).検診によって乳癌死亡率が低下する可能性は,大きな腫瘍の発生率の低下に表れる.しかし,減少した大きな腫瘍はわずか 30 個であり,乳癌死亡率の低下の 2/3 以上は治療の改善によるものであることが,腫瘍径別致死率の低下から示唆される.

結 論

大きな腫瘍が発見される割合はマンモグラフィ検診の導入後に低下したが,腫瘍径の分布に好ましい変化がみられた主な理由は,小さな腫瘍が追加的に発見されたためである.女性は,いずれ大きくなる乳癌が早期に発見される可能性よりも,過剰診断される乳癌を有している可能性のほうが高かった.マンモグラフィ検診導入後の乳癌死亡率の低下は,大部分が全身療法の改善によるものであった.

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2016; 375 : 1438 - 47. )