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October 27, 2016 Vol. 375 No. 17

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中等度の酸素飽和度低下を認める COPD に対する長期酸素療法の無作為化試験
A Randomized Trial of Long-Term Oxygen for COPD with Moderate Desaturation

The Long-Term Oxygen Treatment Trial Research Group

背景

安静時または運動時に中等度の酸素飽和度低下を認める安定期慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対する長期酸素療法の有効性は明らかにされていない.

方 法

この試験の当初のデザインは,安静時に中等度の酸素飽和度低下(パルスオキシメトリーで測定される酸化ヘモグロビン飽和度 [SpO2] が 89~93%)を認める安定期 COPD 患者に長期酸素療法を行うことで,行わない場合と比較して死亡までの期間が延長するかどうかを検討するものであった.7 ヵ月後,34 例を無作為化した時点で試験デザインを見直し,運動時に中等度の酸素飽和度低下(6 分間歩行試験中に SpO2≧80%が 5 分以上,<90%が 10 秒以上続く)を認める安定期 COPD 患者も対象に含め,新たな複合主要評価項目としてあらゆる原因による初回入院までの期間を加えた.患者を,長期酸素療法を行う群(酸素投与群)と行わない群(非酸素投与群)に,1:1 の割合で無作為に割り付けた.酸素投与群では,安静時に酸素飽和度低下を認める患者には 24 時間酸素療法を処方し,運動時にのみ酸素飽和度低下を認める患者には運動時と睡眠時の酸素療法を処方した.試験群の割付けは盲検化しなかった.

結 果

42 施設で 738 例を 1~6 年間追跡した.生存時間(time-to-event)解析では,酸素投与群と非酸素投与群とのあいだで,死亡または初回入院までの期間に有意差は認められず(ハザード比 0.94,95%信頼区間 [CI] 0.79~1.12,P=0.52),全入院率(率比 1.01,95% CI 0.91~1.13),COPD 増悪(率比 1.08,95% CI 0.98~1.19),COPD に関連する入院(率比 0.99,95% CI 0.83~1.17)にも有意差は認められなかった.QOL,肺機能,6 分間歩行距離の測定値に群間で一貫した差は認められなかった.

結 論

安静時または運動時に中等度の酸素飽和度低下を認める安定期 COPD 患者に長期酸素療法を処方しても,処方しなかった場合と比較して,死亡または初回入院までの期間は延長せず,他の評価項目にも持続的な利益をもたらさなかった.(米国国立心臓・肺・血液研究所,メディケア・メディケイドサービスセンターから研究助成を受けた.LOTT 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00692198)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2016; 375 : 1617 - 27. )