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November 3, 2016 Vol. 375 No. 18

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周産期 HIV 感染予防のための抗レトロウイルス療法の利益とリスク
Benefits and Risks of Antiretroviral Therapy for Perinatal HIV Prevention

M.G. Fowler and Others

背景

CD4 高値のヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染妊娠女性を対象とした HIV 母子感染予防における抗レトロウイルス療法(ART)の,ジドブジン投与とネビラピン単回投与に対する相対的なリスクと利益について無作為化試験から得られたデータは不足している.

方 法

CD4 数 350/mm3 以上で妊娠 14 週以上の HIV 感染女性を,ジドブジン投与+ネビラピン単回投与に加え産後 1~2 週間テノホビルとエムトリシタビンを投与する群(ジドブジン単独群),ジドブジン,ラミブジン,ロピナビル・リトナビルを投与する群(ジドブジンベースの ART 群),テノホビル,エムトリシタビン,ロピナビル・リトナビルを投与する群(テノホビルベースの ART 群)に無作為に割り付けた.主要評価項目は,乳児の生後 1 週の時点での HIV 感染と,母子の安全性とした.

結 果

妊娠期間中央値 26 週(四分位範囲 21~30 週)で登録された主にアフリカ系黒人の HIV 感染女性 3,490 例における CD4 数中央値は 530/mm3 であった.児への伝播率は,ART 群がジドブジン単独群よりも有意に低かった(両 ART 群 0.5% 対 ジドブジン単独群 1.8%,差 -1.3 パーセントポイント,反復信頼区間 -2.1~-0.4).しかし,母親のグレード 2~4 の有害事象発現率はジドブジンベースの ART 群がジドブジン単独群よりも有意に高く(21.1% 対 17.3%,P=0.008),グレード 2~4 の血液検査値異常が認められた割合はテノホビルベースの ART 群でジドブジン単独群よりも高かった(2.9% 対 0.8%,P=0.03).2 つの ART 群で有害事象発現率に有意差は認められなかった(P>0.99).出生体重が 2,500 g 未満である頻度は,ジドブジンベースの ART 群がジドブジン単独群よりも高く(23.0% 対 12.0%,P<0.001),テノホビルベースの ART 群もジドブジン単独群より高かった(16.9% 対 8.9%,P=0.004).妊娠 37 週未満の早産の頻度は,ジドブジンベースの ART 群がジドブジン単独群よりも高かった(20.5% 対 13.1%,P<0.001).テノホビルベースの ART 群は,ジドブジンベースの ART 群と比較して 34 週未満の超早産の頻度が高く(6.0% 対 2.6%,P=0.04),生後早期の乳児死亡率も高かったが(4.4% 対 0.6%,P=0.001),テノホビルベースの ART 群とジドブジン単独群とのあいだに有意差は認められなかった(P=0.10,P=0.43).乳児の HIV 非感染生存率は,ジドブジンベースの ART 群がもっとも高かった.

結 論

出産前 ART レジメンによって,ジドブジン単独レジメンと比較して児への早期 HIV 伝播率は有意に低下したが,母親と新生児における有害転帰リスクは上昇した.(米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.PROMISE 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01061151,NCT01253538)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2016; 375 : 1726 - 37. )