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November 24, 2016 Vol. 375 No. 21

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治療中断後のウイルス量のリバウンドに対する HIV 抗体 VRC01 の効果
Effect of HIV Antibody VRC01 on Viral Rebound after Treatment Interruption

K.J. Bar and Others

背景

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対する強力かつ広域な中和抗体(bNAb)が発見されたことで,受動免疫が HIV 感染の予防・治療戦略になる可能性が出てきた.われわれは,HIV の CD4 結合部位を標的とする bNAb,VRC01 の投与による受動免疫によって,抗レトロウイルス療法(ART)中断後の血漿中ウイルス量のリバウンドを安全に予防したり,遅延させたりすることができるかどうかの解明を試みた.

方 法

ART を中断する予定の HIV 感染者を対象に,VRC01 の安全性,副作用プロファイル,薬物動態特性,抗ウイルス活性を検討する 2 件の非盲検試験(AIDS 臨床試験グループ [ACTG] A5340 試験,米国国立衛生研究所 [NIH] 15-I-0140 試験)を行った.

結 果

24 例が登録され,重篤なアルコール関連有害事象が 1 件発生した.VRC01 の血漿中濃度が 50μg/mL を超えていたにもかかわらず,ウイルス量のリバウンドが発生した.リバウンド発生までの期間の中央値は,A5340 試験で 4 週,NIH 試験で 5.6 週であった.4 週の時点でのウイルス抑制率は今回の被験者で歴史的対照よりも高かったが(A5340 試験 38% 対 13%,Fisher の正確確率検定 [両側] で P=0.04;NIH 試験 80% 対 13%,Fisher の正確確率検定 [両側] で P<0.001),8 週の時点での差は有意ではなかった.ART 実施前,ART 中断前後のウイルス集団の解析では,VRC01 によって,リバウンドするウイルスに選択圧がかかり,その結果ウイルス再燃が抑制され,既存・新規両方の抗体中和耐性ウイルスが選択されたことが示された.

結 論

VRC01 によって,被験者の血漿中ウイルス量のリバウンドは歴史的対照と比較してわずかに遅延したが,ウイルス抑制は 8 週まで持続しなかった.今回の 2 試験に登録された少数の被験者では,bNAb(VRC01)単剤投与による受動免疫の安全性に対する懸念は認められなかった.(米国国立アレルギー感染症研究所ほかから研究助成を受けた.ACTG A5340 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02463227,NIH 15-I-0140 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02471326)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2016; 375 : 2037 - 50. )