September 1, 2016 Vol. 375 No. 9
悪性黒色腫の PD-1 阻害に対する獲得耐性に関連する変異
Mutations Associated with Acquired Resistance to PD-1 Blockade in Melanoma
J.M. Zaretsky and Others
悪性黒色腫に対する抗プログラム死 1(PD-1)抗体療法により客観的奏効が得られた患者の約 75%では効果が持続し,数年続くこともあるが,当初は客観的腫瘍縮小が認められても,治療を継続しているにもかかわらずずっとあとに再発が認められる例もある.
転移性悪性黒色腫に対する抗 PD-1 抗体(ペムブロリズマブ [pembrolizumab])療法により当初は客観的腫瘍縮小が認められたが,数ヵ月~数年後に病勢進行が認められた 4 例を対象とし,ベースラインと再発時に採取した生検検体をペアで解析した.
全エクソーム解析にて,獲得耐性腫瘍のクローン選択と増殖が検出され,4 例中 2 例で,インターフェロン受容体関連ヤヌスキナーゼ 1 ,ヤヌスキナーゼ 2 をコードする遺伝子(JAK1,JAK2)の耐性関連機能喪失型変異が,野生型アレルの欠失と同時に生じていることが明らかになった.別の 1 例では,抗原提示蛋白β2 ミクログロブリンをコードする遺伝子(B2M)の短縮型変異が同定された.JAK1,JAK2 の短縮型変異は,インターフェロンγに対する反応を喪失させ,癌細胞増殖抑制作用に対する非感受性などが認められた.B2M の短縮型変異は,主要組織適合複合体クラス I の表面発現を喪失させた.
この研究では,悪性黒色腫患者での PD-1 を阻害する免疫療法に対する獲得耐性には,インターフェロン受容体シグナル伝達と抗原提示が関与する経路の欠損との関連が認められた.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)