体重変動と冠動脈疾患の転帰
Body-Weight Fluctuations and Outcomes in Coronary Disease
S. Bangalore and Others
心血管疾患を有しない患者では,体重変動は死亡と冠動脈イベントの危険因子である.冠動脈疾患を有する患者では,体重変動が転帰に影響するかどうかは明らかにされていない.
アトルバスタチンによる低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール低下の有効性と安全性を評価した新規標的治療(TNT)試験の事後解析を行った.ベースライン時と追跡調査時に測定された体重から,個人内変動を求めた.主要転帰は,全冠動脈イベント(冠動脈心疾患による死亡,非致死的心筋梗塞,心停止からの蘇生,血行再建,狭心症の複合)とした.副次的転帰は,全心血管イベント(全冠動脈イベント,脳血管イベント,末梢血管疾患,心不全の複合),死亡,心筋梗塞,脳卒中とした.
9,509 例において,危険因子,ベースライン脂質値,平均体重,体重変化で補正すると,体重変動(連続する変動量の平均とし,時間依存性の共変量として用いた)の標準偏差(SD)が 1 増加するごとに,全冠動脈イベント(2,091 件,ハザード比 1.04,95%信頼区間 [CI] 1.01~1.07,P=0.01),全心血管イベント(2,727 件,ハザード比 1.04,95% CI 1.02~1.07,P<0.001),死亡(487 件,ハザード比 1.09,95% CI 1.07~1.12,P<0.001)のリスク上昇に関連した.補正後モデルでは,体重変動の最高五分位群は,最低五分位群と比較して,冠動脈イベントのリスクが 64%高く,心血管イベントのリスクが 85%高く,死亡リスクが 124%高く,心筋梗塞リスクが 117%高く,脳卒中リスクが 136%高かった.
冠動脈疾患を有する患者では,体重変動は,従来の心血管危険因子とは独立に,死亡率がより高いことと,心血管イベントの発生率がより高いことに関連した.(Pfizer 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00327691)