The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

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日本語アブストラクト

January 12, 2017 Vol. 376 No. 2

冠動脈手術を受ける患者に対するトラネキサム酸
Tranexamic Acid in Patients Undergoing Coronary-Artery Surgery

P.S. Myles and Others

背景

トラネキサム酸は心臓手術を受ける患者の出血のリスクを低下させるが,それによって転帰が改善するかどうかは明らかにされていない.さらに,トラネキサム酸には血栓形成促進作用と痙攣誘発作用がある可能性があり,懸念されている.

方 法

2×2 要因デザイン試験で,冠動脈手術が予定されており,周術期合併症のリスクがある患者を,アスピリンまたはプラセボ,トラネキサム酸またはプラセボに無作為に割り付けた.ここではトラネキサム酸とプラセボとの比較の結果を報告する.主要転帰は,術後 30 日以内の死亡と血栓性合併症(非致死的心筋梗塞,脳卒中,肺塞栓症,腎不全,腸梗塞)の複合とした.

結 果

登録し同意の得られた 4,662 例のうち,4,631 例が手術を受け,転帰のデータを入手しえた.2,311 例がトラネキサム酸群に,2,320 例がプラセボ群に割り付けられた.主要転帰イベントは,トラネキサム酸群の 386 例(16.7%)とプラセボ群の 420 例(18.1%)に発生した(相対リスク 0.92,95%信頼区間 0.81~1.05,P=0.22).入院中に輸血された血液製剤の総単位数は,トラネキサム酸群が 4,331 単位,プラセボ群が 7,994 単位であった(P<0.001).再手術にいたった重大な出血または心タンポナーデは,トラネキサム酸群の 1.4%とプラセボ群の 2.8%に発生し(P=0.001),痙攣はそれぞれ 0.7%と 0.1%に発生した(Fisher の正確確率検定で P=0.002).

結 論

冠動脈手術を受ける患者において,トラネキサム酸は,プラセボと比較して出血のリスクが低いことと関連し,術後 30 日以内の死亡と血栓性合併症のリスクが高くなることはなかった.トラネキサム酸は,術後痙攣のリスクが高いことと関連していた.(オーストラリア国立保健医療研究審議会ほかから研究助成を受けた.ATACAS 試験:Australia New Zealand Clinical Trials Registry 番号 ACTRN12605000557639)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2017; 376 : 136 - 48. )