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February 23, 2017 Vol. 376 No. 8

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遺伝性血管性浮腫の発作予防のための血漿カリクレイン阻害
Inhibiting Plasma Kallikrein for Hereditary Angioedema Prophylaxis

A. Banerji and Others

背景

C1 インヒビター欠損による遺伝性血管性浮腫は,予測不能な腫脹を繰り返すのが特徴である.腫脹は,血漿カリクレインの制御不能な産生と,高分子キニノゲンの分解によってブラジキニンが過剰に遊離されることで生じる.ラナデルマブ(lanadelumab)(DX-2930)は,C1 インヒビター欠損による遺伝性血管性浮腫の発作を予防する可能性のある新規カリクレイン阻害薬である.

方 法

第 1b 相多施設共同二重盲検プラセボ対照複数用量反復投与試験を行った.C1 インヒビター欠損による遺伝性血管性浮腫患者を,ラナデルマブ群(24 例)とプラセボ群(13 例)に 2:1 の割合で無作為に割り付け,14 日間隔で 2 回投与した.ラナデルマブ群では 4 段階の総用量を設定し,30 mg 群(4 例),100 mg 群(4 例),300 mg 群(5 例),400 mg 群(11 例)に割り付けた.ラナデルマブの薬力学プロファイルは,分解された高分子キニノゲンの血漿中濃度の測定により評価し,有効性は,事前に設定した期間(8~50 日目)に 300 mg 群と 400 mg 群で血管性浮腫の発作が出現した割合をプラセボ群と比較し,評価した.

結 果

ラナデルマブ投与例で有害事象,重篤な有害事象,死亡による中止はなかった.治療中に発現した有害事象でとくに頻度が高かったのは,血管性浮腫の発作,注射部位疼痛,頭痛であった.ラナデルマブの血清中濃度に用量に比例した上昇が観察された.平均消失半減期は約 2 週間であった.300 mg または 400 mg のラナデルマブにより,患者の血漿中高分子キニノゲンの分解は,非患者に近いレベルまで減少した.8~50 日目に,300 mg 群と 400 mg 群で出現した発作は,プラセボ群と比較してそれぞれ 100%と 88%少なかった.発作が出現しなかった患者の割合は,300 mg 群では全例,400 mg 群では 82%(11 例中 9 例)であったのに対し,プラセボ群では 27%(11 例中 3 例)であった.

結 論

この小規模試験において,C1 インヒビター欠損による遺伝性血管性浮腫患者に対するラナデルマブの投与により,高分子キニノゲンの分解と血管性浮腫の発作が減少した.(Dyax 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02093923)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2017; 376 : 717 - 28. )