September 21, 2017 Vol. 377 No. 12
動脈硬化性疾患に対するカナキヌマブによる抗炎症療法
Antiinflammatory Therapy with Canakinumab for Atherosclerotic Disease
P.M. Ridker and Others
脂質に影響を与えずに炎症を抑制することによる心血管疾患リスク低下の可能性が,実験データと臨床データから示唆されている.しかし,アテローム血栓症に炎症が関与しているという仮説は,まだ証明されていない.
心筋梗塞の既往を有し,高感度 C 反応性蛋白(CRP)が 2 mg/L 以上の患者 10,061 例を対象に,インターロイキン-1βを標的とするモノクローナル抗体治療薬カナキヌマブの無作為化二重盲検試験を行い,3 用量のカナキヌマブ(50 mg,150 mg,300 mg のいずれかを 3 ヵ月ごとに皮下投与)をプラセボと比較した.主要有効性エンドポイントは,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中,心血管死亡とした.
48 ヵ月の時点で,高感度 CRP のベースラインからの低下率の中央値は,プラセボ群と比較して,カナキヌマブ 50 mg 群では 26 パーセントポイント大きく,150 mg 群では 37 パーセントポイント大きく,300 mg 群では 41 パーセントポイント大きかった.カナキヌマブ群では脂質にベースラインからの低下はみられなかった.追跡期間中央値 3.7 年の時点で,主要エンドポイントの発生率は,プラセボ群では 100 人年あたり 4.50 件,50 mg 群では 100 人年あたり 4.11 件,150 mg 群では 100 人年あたり 3.86 件,300 mg 群では 100 人年あたり 3.90 件であった.プラセボ群に対するハザード比は,50 mg 群では 0.93(95%信頼区間 [CI] 0.80~1.07,P=0.30),150 mg 群では 0.85(95% CI 0.74~0.98,P=0.021),300 mg 群では 0.86(95% CI 0.75~0.99,P=0.031)であった.150 mg 群のみが,主要エンドポイントと,緊急血行再建にいたった不安定狭心症による入院を追加した副次的エンドポイントの統計的有意性に関して,事前に規定した多重性調整閾値を満たした(プラセボに対するハザード比 0.83,95% CI 0.73~0.95,P=0.005).カナキヌマブは,プラセボと比較して致死的感染症の発生率が高いことに関連した.全死因死亡率に有意差は認められなかった(カナキヌマブ全用量のプラセボに対するハザード比 0.94,95% CI 0.83~1.06,P=0.31).
インターロイキン-1β自然免疫経路を標的とする,カナキヌマブ 150 mg の 3 ヵ月ごと投与による抗炎症療法は,脂質を低下させることなく,再発性心血管イベントの発生率をプラセボと比較して有意に低下させた.(Novartis 社から研究助成を受けた.CANTOS 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01327846)