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August 24, 2017 Vol. 377 No. 8

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強化血圧コントロールと標準血圧コントロールとの費用対効果の比較
Cost-Effectiveness of Intensive versus Standard Blood-Pressure Control

A.P. Bress and Others

背景

収縮期血圧介入(SPRINT)試験では,収縮期血圧の強化コントロール(目標 120 mmHg 未満)を受けた心血管疾患リスクの高い成人は,標準コントロール(目標 140 mmHg 未満)を受けた心血管疾患リスクの高い成人と比較して,死亡率と心血管疾患イベント発生率が有意に低かった.これらのデータをもとに,強化コントロールと標準コントロールとで,生涯にわたる健康利益と医療費の比較を試みた.

方 法

マイクロシミュレーションモデルを用いて,国内の情報源から得た SPRINT 試験の治療効果と医療費を,SPRINT 試験の適格成人の仮想コホートに適用した.このモデルによって,収縮期血圧の強化コントロールと標準コントロールとで,高血圧患者の治療とモニタリングにかかる生涯費用,心血管疾患イベントとその後の治療費,治療に関連する重篤な有害事象のリスクとその後の費用,質調整生存年(QALY)を予測した.

結 果

平均 QALY は強化コントロール群が標準コントロール群よりも 0.27 大きく,5 年後にアドヒアランスと治療効果が低下していた場合の 1 QALY 獲得あたりの費用の増分は約 47,000 ドルと予測された.治療効果が残りの生涯持続した場合,1 QALY 獲得あたりの費用の増分は約 28,000 ドルであった.ほとんどのシミュレーション結果は,治療効果が 5 年後に低下している,あるいは残りの生涯持続しているかにかかわらず,強化治療の費用対効果が高い(支払意思額の閾値を 1 QALY あたり 50,000 ドルとした場合はそれより 51~79%下回り,100,000 ドルとした場合はそれより 76~93%下回る)ことを示した.

結 論

今回のシミュレーション研究では,収縮期血圧の強化コントロールによって心血管疾患イベントが予防され,寿命が延長された.またそれは,治療効果が 5 年後に低下している,あるいは残りの生涯持続しているかにかかわらず,1 QALY あたりの支払意思額の一般的な閾値を下回る費用で達成された.(米国国立心臓・肺・血液研究所ほかから研究助成を受けた.SPRINT 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01206062)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2017; 377 : 745 - 55. )