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April 19, 2018 Vol. 378 No. 16

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輸血依存性βサラセミア患者に対する遺伝子治療
Gene Therapy in Patients with Transfusion-Dependent β-Thalassemia

A.A. Thompson and Others

背景

輸血依存性 β サラセミア患者に対する同種造血細胞移植は,ドナーの存在と移植関連リスクによって制限される.われわれは以前に,β サラセミア患者に対する標識された β グロビン(βA-T87Q)遺伝子のレンチウイルスベクターによる導入が長期の赤血球輸血に代わりうることを示したあと,輸血依存性 β サラセミア患者に対するそのような遺伝子治療の安全性と有効性を評価したいと考えた.

方 法

2 件の第 1・2 相試験において,輸血依存性 β サラセミア患者 22 例(12~35 歳)から動員自家 CD34 陽性細胞を採取し,T87Q のアミノ酸置換を伴う成体ヘモグロビン(HbAT87Q)をコードする LentiGlobin BB305 ベクターを用いてその細胞に ex vivo 遺伝子導入を行った.次に,その細胞を,ブスルファンによる骨髄破壊的前処置を受けた患者に再注入した.その後,有害事象,ベクターの挿入,複製能を有するレンチウイルスの数を観察した.総ヘモグロビン濃度と HbAT87Q 濃度,輸血の必要性,ベクターコピー数の平均などを有効性評価項目とした.

結 果

遺伝子改変細胞の注入から中央値 26 ヵ月(15~42 ヵ月)の時点で,非 β0/b0 遺伝子型患者 13 例のうち,1 例を除く全例が赤血球輸血を中断していた.HbAT87Q 濃度の範囲は 3.4~10.0 g/dL,総ヘモグロビン濃度の範囲は 8.2~13.7 g/dL であった.ヘモグロビン濃度が正常値に近かった患者では,赤血球産生障害の生物学的マーカーが適正化されていた.β00 遺伝子型,もしくは IVS1-110 変異を 2 コピー有する 9 例では,年間輸血量の中央値が 73%減少し,3 例で赤血球輸血が中止された.治療関連有害事象は,自家幹細胞移植関連有害事象に典型的なものであった.ベクターの挿入に関連するクローンの優性化は認められなかった.

結 論

BB305 ベクターを用いて遺伝子導入した自家 CD34 陽性細胞による遺伝子治療によって,重症 β サラセミア患者 22 例で,治療に関連する重篤な有害事象を伴うことなく長期の赤血球輸血の必要性が低下するか,必要性がなくなった.(Bluebird Bio 社ほかから研究助成を受けた.HGB-204 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01745120,HGB-205 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02151526)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2018; 378 : 1479 - 93. )