January 25, 2018 Vol. 378 No. 4
検査で確定したインフルエンザ感染後の急性心筋梗塞
Acute Myocardial Infarction after Laboratory-Confirmed Influenza Infection
J.C. Kwong and Others
急性心筋梗塞は急性呼吸器感染症によって引き起こされる場合がある.先行研究からはインフルエンザと急性心筋梗塞との関連が示唆されているが,これらの研究では,インフルエンザ感染の非特異的検査法が用いられたり,バイアスの影響を受けやすい研究デザインが採用されたりしていた.われわれは,検査で確認されたインフルエンザ感染と急性心筋梗塞との関連を評価した.
患者本人を対照とするケースシリーズのデザインを用いて,検査で確認されたインフルエンザ感染と急性心筋梗塞による入院との関連を評価した.特異度が高いさまざまな検査法を用いて呼吸器検体におけるインフルエンザ感染を確定し,急性心筋梗塞による入院を行政データから特定した.呼吸器検体採取後の 7 日間を「リスク期間」,リスク期間の前後それぞれ 1 年間を「対照期間」と定義した.
インフルエンザ陽性判定の前後それぞれ 1 年以内に発生した急性心筋梗塞による入院は 364 件同定された.このうち 20 件(1 週あたりの入院件数 20.0 件)はリスク期間に発生し,344 件(1 週あたりの入院件数 3.3 件)は対照期間に発生していた.リスク期間における急性心筋梗塞による入院の,対照期間と比較した発生率比は 6.05(95%信頼区間 [CI] 3.86~9.50)であった.7 日目以降には発生率の上昇は認められなかった.B 型インフルエンザ,A 型インフルエンザ,RS ウイルス,その他のウイルスの,検出後 7 日以内の急性心筋梗塞の発生率比はそれぞれ 10.11(95% CI 4.37~23.38),5.17(95% CI 3.02~8.84),3.51(95% CI 1.11~11.12),2.77(95% CI 1.23~6.24)であった.
呼吸器感染症,とくにインフルエンザと急性心筋梗塞とのあいだには有意な関連が認められた.(カナダ保健研究機構ほかから研究助成を受けた.)