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February 8, 2018 Vol. 378 No. 6

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HTLV-1 関連脊髄症に対するモガムリズマブ(抗 CCR4 抗体)
Mogamulizumab (Anti-CCR4) in HTLV-1–Associated Myelopathy

T. Sato and Others

背景

ヒト T リンパ球向性ウイルス 1 型(HTLV-1)は,成人 T 細胞白血病・リンパ腫(ATLL)のほか,難治性の神経慢性炎症性疾患である HTLV-1 関連脊髄症/熱帯性痙性対麻痺(HAM–TSP)を引き起こす.HAM–TSP 患者において,HTLV-1 は主に CCR4 陽性 T 細胞に感染して機能を変化させ,その結果脊髄の慢性炎症を引き起こす.われわれは HAM–TSP 患者を対象に,HTLV-1 に感染した細胞を標的とするヒト化抗 CCR4 モノクローナル抗体(モガムリズマブ)の有用性を評価した.

方 法

非対照第 1/2a 相試験において,グルココルチコイド治療により効果不十分な HAM–TSP 患者を対象に,モガムリズマブの安全性,薬物動態,有効性を評価した.第 1 相用量漸増試験では,21 例にモガムリズマブ(0.003 mg/kg,0.01 mg/kg,0.03 mg/kg,0.1 mg/kg,0.3 mg/kg のいずれか)を単回点滴静注し,85 日間経過観察した.このうち 19 例を第 2a 相試験に引き続き組み入れ,0.003 mg/kg,0.01 mg/kg,0.03 mg/kg のいずれかを 8 週ごと,または 0.1 mg/kg もしくは 0.3 mg/kg を 12 週ごとに 24 週間点滴静注した.

結 果

モガムリズマブは副作用で投与が制限されることなく最大用量(0.3 mg/kg)まで忍容された.発現頻度がもっとも高かった副作用はグレード 1 または 2 の皮疹(患者の 48%)であり,次いでリンパ球減少と白血球減少(いずれも 33%)であった.末梢血単核細胞中のプロウイルス量の用量依存的減少(投与 15 日目に 64.9%減少,95%信頼区間 [CI] 51.7~78.1)と,脳脊髄液中の炎症マーカーの用量依存的減少(投与 29 日目に CXCL10 濃度は 37.3%減少 [95% CI 24.8~49.8],ネオプテリン濃度は 21.0%減少 [95% CI 10.7~31.4])が認められ,これらの効果は第 2a 相試験期間中も追加投与により維持された.また痙性の改善が患者の 79%に認められ,運動障害の改善が 32%に認められた.

結 論

モガムリズマブにより,HTLV-1 感染細胞数と脳脊髄液中の炎症マーカーが減少した.また主な副作用は皮疹であった.今後は,モガムリズマブが HAM–TSP の臨床症状にもたらす効果について検証する必要がある.(日本医療研究開発機構,厚生労働省から研究助成を受けた.UMIN 臨床試験登録番号 UMIN000012655)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2018; 378 : 529 - 38. )