重症白血球接着不全症 1 型に対するレンチウイルス遺伝子治療
Lentiviral Gene Therapy for Severe Leukocyte Adhesion Deficiency Type 1
C. Booth and Others
インテグリンのβ2 共通サブユニットである CD18 は,白血球の血管内皮への接着や,炎症組織,感染組織への血管外遊出に不可欠である.CD18 をコードする ITGB2 の有害バリアントは,白血球接着不全症 I 型(LAD-I)を引き起こす.LAD-I は先天性免疫異常症の 1 つであり,生命を脅かす感染を頻回に引き起こし,重症の患児は死亡リスクが高い.同種造血幹細胞移植(HSCT)が治癒的な治療法であるが,ドナーの有無,移植片対宿主病の発症率の高さ,生着不全による制限がある.
第 1・2 相国際共同非盲検試験で,重症 LAD-I の小児 9 例を登録し,マルネテグラジーン オートテムセル(marnetegragene-autotemcel [marne-cel])で治療し,24 ヵ月間追跡した.marne-cel は,ヒト ITGB2 を含有する自己不活性化レンチウイルスベクターで形質導入した自家 CD34 陽性造血幹細胞を用いた遺伝子治療である.第 2 相試験の主要有効性評価項目は,同種 HSCT なしでmarne-cel 注入後 1 年以上,登録時に 1 歳未満であった場合は 2 歳の時点で生存していることとし,39%が生存しているという帰無仮説を棄却する検定を行った.長期追跡調査に登録された 6 例の中間データについても報告する.
ブスルファンによる骨髄破壊的前処置に関連した重篤な有害事象が観察された.遺伝子治療に起因する有害事象は報告されなかった.生着不全となった例はなかった.HSCT なし生存率は,注入後 1 年の時点で 100%(95%信頼区間 [CI] 66~100)であった(P<0.001).1 歳未満で登録された患児全例が,2 歳を超えて生存していた.治療前に存在した,LAD-I に関連する好中球増加症と皮膚病変は消失した.marne-cel 注入後 24 ヵ月間における,生着後の感染症に関連した 90 日を超える入院の年間発生率は,marne-cel 注入前と比較して 74.45%低く,感染症に関連する長期入院の年間発生率は 81.95%低く,事前に規定した重篤な感染症の年間発生率は 84.90%低かった.
この試験で,レンチウイルスベクターで形質導入した自家 CD34 陽性細胞を用いた HSCT は,重症 LAD-I の治療に成功した.(ロケット ファーマシューティカルズ社,米国カリフォルニア州再生医療機構から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03812263,NCT06282432)