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    NEJM.orgからピックアップされている注目記事の一覧です.

September 9, 2004
Vol. 351 No. 11

ORIGINAL ARTICLE

  • 10~18 歳時の肺の発達に大気汚染が及ぼす影響
    The Effect of Air Pollution on Lung Development from 10 to 18 Years of Age

    10~18 歳時の肺の発達に大気汚染が及ぼす影響

    肺は,10~18 歳のあいだに大きく成長する.肺が成長するこの期間に大気汚染にさらされることで,肺の成長が妨げられると考える根拠はあったが,それを支持する説得力のあるデータはなかった.カリフォルニア南部で実施されたこの研究では,大気汚染が深刻な地域の小児は,大気汚染のより少ない地域の小児に比べ肺機能が有意に劣っていた.
    大気の汚染された地域で成長した小児は,肺が十分に発達していない.この影響の大きさは,臨床的・生理学的に重要である.

  • 都市部の喘息患児における家庭環境への介入結果
    Results of a Home-Based Environmental Intervention among Urban Children with Asthma

    喘息は,遺伝的影響と環境的影響の双方によって引き起される.都市部の貧しい地区で実施されたこの多施設共同対照研究では,多角的な環境的介入が喘息の管理に有用であった.
    この研究の転帰は症状のみられない日数であった.環境的介入はいずれも容易に実行できるもので,中程度の好ましい結果が得られた.

  • 小児の血栓症における転帰の予測因子としての血漿第 VIII 因子および D-ダイマーの濃度
    Plasma Factor VIII and D-Dimer Levels as Predictors of Outcomes of Thrombosis in Children

    小児の血栓症における転帰の予測因子としての血漿第 VIII 因子および D-ダイマーの濃度

    最長 5 年間追跡調査を受けた血栓症の小児 82 例において,診断時に第 VIII 因子,D-ダイマー,またはその両方の値が高いことや,追跡期間中に高値が続くことから,不十分な血栓消退や血栓症の再発,あるいは血栓後症候群が予測された.
    小児の静脈血栓症は,慢性炎症性疾患が原因で生じることがあり,これに伴い第 VIII 因子の濃度が上昇する可能性がある.この研究では,血栓症の小児における第 VIII 因子の高値に,副因との関連はみられなかった.

  • エリスロマイシンと心原性突然死
    Erythromycin and Sudden Death from Cardiac Causes

    エリスロマイシンと心原性突然死

    エリスロマイシンは,心臓の再分極を延長させることが知られており,トルサード・ド・ポアンツ(torsades de pointes)の症例報告と関連付けられている.この研究では,エリスロマイシンの経口投与により,心原性突然死のリスクが 2 倍上昇することが判明した.エリスロマイシンと,ベラパミルやジルチアゼム等のチトクロム P450 阻害薬を併用すると,突然死のリスクが 5 倍上昇した.したがって,エリスロマイシンは,これらの薬物投与を受けている患者に処方すべきではない.

CLINICAL PRACTICE

  • 拡張機能障害
    Diastolic Dysfunction

    高血圧症の既往がある 78 歳の女性が,うっ血性心不全のため入院する.身体診察では,血圧 180/90 mmHg,頸静脈圧の上昇,末梢性浮腫,肺ラ音が認められる.胸部 X 線像では肺水腫と軽度の心肥大がみられる.心エコー図で左室駆出率は 70%である.ドップラー法による左室充満パターンは異常を示し,肺毛細管楔入圧の上昇と一致している.この患者をどのように治療すべきであろうか?

DRUG THERAPY

  • チアゾリジンジオン系薬剤
    Thiazolidinediones

    2 型糖尿病が増加し,新たな血糖降下薬が強く必要とされているにもかかわらず,この 20 年間に導入された薬剤はきわめて少ない.チアゾリジンジオン系薬は,重要な可能性を秘めた新規グループの薬剤で,その作用機序は既存の治療薬とは異なり,既存の治療薬と補完的に作用すると考えられる.この論文では,チアゾリジンジオン系薬剤による治療の作用機序,適応,限界に関して,現在得られているデータを検討している.

CASE RECORDS OF THE MASSACHUSETTS GENERAL HOSPITAL

  • 血小板減少,凝固異常,肝脾腫大を呈する新生双生児
    Newborn Twins with Thrombocytopenia, Coagulation Defects, and Hepatosplenomegaly

    一卵性双生児の男児新生児に,血小板減少,白血球減少,肝脾腫大が認められた.血小板輸血の効果はみられなかった.感染症に対するスクリーニング検査は陰性であった.骨髄穿刺検査では,単一の血球貪食性組織球が認められた.内科的管理にもかかわらず,患児の容態は悪化し続けた.診断手技が行われた.

SOUNDING BOARD

  • 階級 ― ないがしろにされてきた国民の健康の決定要素
    Class ― The Ignored Determinant of the Nation's Health

    この論文で著者らは,健康における人種や民族の格差は適切に注目されてきたが,健康と階級(すなわち収入,教育,職業)の関係はそれほど理解されていないと主張している.著者らは,収入と教育レベルがより高いことと,より健康であることとの強い相関性に注意を向けながら,階級差に取り組む社会政策・経済政策に投資することで,国民の健康が大幅に増進される可能性があることを示唆している.