《1日目:NEJM訪問》

The New England Journal of MedicineはMassachusetts Medical Societyが発行しています。今日は、そのMMSでミーティングです。どんな組織がこのような雑誌を発行しているのか、興味があります。

ボストンから車で40分くらいのところの郊外の町Walthamの森の中にありました。思ったより大きいです。300人以上が働いているそうです。NEJMとJournal Watchという抄読雑誌しか発行していませんが全世界的に売れるのですからこれくらいは必要かもしれません。


こんな森に囲まれた場所にあります。

玄関で記念撮影。


200年前に発行されたNEJMの第一号です。

《2日目:ハーバード大学を訪問》


ハーバード大学医学部の本館。威容があります。威風堂々

医学図書館の最上階6階にNEJMの編集部がありました。図書館の中にあるということで、自分の職場と同じで共感をもてます。


編集会議室。出版の予定が掲げてあります。

NEJM編集長のお部屋です。

ちょっと歩いたところにあるマサチューセッツ総合病院(MGH)です。900床くらいですが、臨床のレベルは世界一といわれます。一番臨床教育を受けたかった病院です。NEJMのCPCがここで行われています。

《3日目:シンポジウムに参加》

2012年6月22日、The New England Journal of Medicine創刊200周年記念シンポジウム「Dialogues in Medicine - Physicians and Patients on 200 Years of Progress(医学における対話 ― 医師と患者、200年の進歩を経て)」が、ハーバード大学医学部内のジョセフB.マーティン・カンファレンスセンターにて開催された。

8時から受付が開始され、それぞれ名札と200周年記念バッチなどを受け取り、ロビーでは受付を済ませた人々が、用意されたコーヒーやパン、ビスケットなどをつまみながら、挨拶や会話を交わしている。開始時刻は9時。その5分前にはカンファレンス会場に導かれたが、ほぼ満員状態であった。集まったのは約300人で、そのうち100人は「NEJMの今後」と題したエッセイに入選した学生諸君とのことであった。

9時ちょうどにNEJMの編集長であるJeffrey Drazen氏が壇上に立ち、「では始めます」と挨拶。早速討議が開始された。

第1演題はHIV/AIDS。モデレーター(司会)はMartin Hirsch氏(ハーバード大学医学部 教授、ハーバード公衆衛生大学院 感染症・免疫学教授)。40年以上ウイルス研究に携わってきた方である。パネリストはPaul Farmer氏(医学人類学者 兼 医師、Partners In Health[貧困層への医療活動支援プロジェクト]創設者)、Anthony Fauci氏(米国国立衛生研究所[NIH]の米国国立アレルギー・感染症研究所[NIAID]所長)、Beatrice Hahn氏(現 ペンシルヴェニア大学 血液・腫瘍学部 医学・微生物学 教授)、David Ho氏(Aaron Diamondエイズ研究センター創設時の科学部門長 兼CEO、ロックフェラー大学Irene Diamond教授)、Robert Massie氏(New Economics Institute所長[21世紀の米国経済の革新的モデルに関する国家シンクタンク])の5名であった。まず、HIV/AIDSの歴史を Anthony Fauci氏が説明し、その後HIVワクチン開発における課題は何か? 予防・治療に別のアプローチはあるか?など、科学的見地に立った論議となった。特にアフリカ地域での厳しい状況は変わっておらず、その対策等も検討された。

続いて、第2演題はMaternal & Fetal Health(母体と胎児の健康)。モデレーターはMargaret Hostetter氏(シンシナティ小児病院医療センター Albert B. Sabin教授 兼 感染症部門長、小児感染症認定専門医)。肺炎球菌など、新生児期・小児期の重篤な感染症に対するこれまでにない洞察で知られている。パネリストはDiana Bianchi氏(生殖遺伝学を専門とする臨床遺伝学者、タフツ医療センターの母子研究所 所長、タフツ大学医学部 小児科学・産科学・婦人科学 Natalie V. Zucker教授)、Michael Greene氏(ハーバード大学医学部 産科学・婦人科学・生殖生物学 教授、マサチューセッツ総合病院 産科部長)、Nawal Nour氏(産科・婦人科認定専門医、ブリガム&ウィメンズ病院 産科外来・総合産婦人科部長、ハーバード大学医学部 准教授)、Chris Wilson氏(ビル&メリンダ・ゲイツ財団Global Health Discovery and Translational Sciencesプログラム ディレクター)の4名であった。母体・胎児の健康問題を解決するために、いま用いることのできるツールは? 新たに考案すべき戦略は?といった内容が討議された。


お昼は35℃の炎天下でサンドイッチであった。

午後は第3演題のBreast Cancer(乳癌)から始まった。モデレーターはRobert Mayer氏(ダナ・ファーバー癌研究所 学務部長、ハーバード大学医学部 Stephan B. Kay教授 兼 副学部長)。ダナ・ファーバー癌研究所の臨床腫瘍学フェローシッププログラムを36年間指導したほか、消化器腫瘍センターを創設した。パネリストはLisa Carey氏(ノースカロライナ大学医学部 血液・腫瘍学部の乳癌研究におけるRichardson and Marilyn Jacobs Preyer特別教授)、Marc Lippman氏(マイアミ大学レオナルドM.ミラー医学校 医学Kathleen and Stanley Glaser教授、2007年5月より同大学医学部長)、Robin Roberts氏(ABC“Good Morning America”キャスター、2007年に乳癌の診断を受け、闘病を公にし数々の賞を受賞)、George Sledge氏(インディアナ大学サイモン癌センター 乳癌プログラム共同ディレクター、現 同大学 医学・病理学教授)の4名であった。乳癌の発見率・治療はこの200年で劇的に向上したが、いま、乳癌患者の診断・治療をより効率的に行うにはどうすればよいか? そして今後は?といった内容が討議された。

そして最後、第4演題はCardiology(心臓病)。モデレーターはJoseph Loscalzo氏(ハーバード大学医学部 医学理論・実践 Hersey教授、ブリガム&ウィメンズ病院 医学部長 兼 医師長)。約700論文、31書籍、31特許の実績があり、一酸化窒素、血小板機能、アテローム血栓といった血管生物学の研究で知られている。

このセッションのパネリストには、心臓病では世界的に著名なEugene Braunwald先生が登場し、心臓病の歴史を、1812年のNEJM初号に掲載されたAngina Pectoris(狭心症)に関する論文を引いて解説した。

そのほかのパネリストはEmelia Benjamin氏(ボストン大学 医学・疫学 教授、ボストン大学医療センター 臨床心臓病専門医)、Desmond Jordan氏(コロンビア大学 臨床麻酔学・バイオメディカルインフォマティクス 准教授、ニューヨーク長老派教会病院 麻酔科医)、Thomas Lüscher氏(チューリッヒ大学・大学病院 心臓病学・心血管生理学 教授 兼 部長)、Craig Smith氏(心臓外科医、コロンビア長老派教会病院 外科部長)で、計5名であった。循環器領域における進歩とむずかしい選択肢を、個々の患者の管理にいかにして取り入れていくか? 最終成績によって患者の生活がよりよくなることを、どうしたら請け合えるか?といった内容が討議された。

会場にはそれぞれの分野の200年を簡単になぞった様々な展示(循環器、神経科、外科、糖尿病等)もあった。これは小児科の200年。

日本からは、NEJMの編集委員である北島先生(中央)、NEJMの日本総代理店である南江堂洋書部の青柳氏(右)、そして私北村(左)が出席した。

有名なボストン美術館の館内。
シンポジウム後のカクテルパーティはここで行なわれました。ヨーロッパ美術の展示場がパーティ会場です。