低エネルギー胸壁衝撃(心振盪)による突然死の実験モデル
AN EXPERIMENTAL MODEL OF SUDDEN DEATH DUE TO LOW-ENERGY CHEST-WALL IMPACT (COMMOTIO CORDIS)
M.S. LINK AND OTHERS
胸壁に対する低エネルギー外傷(心振盪)による突然死症候群は,若いスポーツ競技者にみられることが記述されているが,そのメカニズムは不明である.
大きさおよび重量が正規の野球ボールと同じ木製の物体によって,胸壁に対する低エネルギー衝撃を引き起す,心振盪のブタのモデルを開発した.この発射物は時速 30 マイル(48 km)の速度で,心サイクルのリズムに合わせて発射した.
まず若いブタ 18 頭を対象とし,6 頭に多回胸部衝撃,そして 12 頭に単回衝撃を与えた.心電図の T 波のピーク前の 30~15 msec のウィンドウ期間に起った衝撃 10 回中,9 回が心室細動を引き起した.心室細動は,心サイクル中の他の時間での衝撃では生じなかった.QRS 群のあいだに受けた衝撃 10 回中,4 回が一過性の完全心ブロックを引き起した.われわれはまた,正規の硬式ボールより柔らかい軟式ボールを用いれば,不整脈のリスクが減少するか否かも調べた.さらに動物 48 頭に対し,3 種類の堅さの硬式および軟式ボールによって,心室細動になりやすい T 波ウィンドウ期間に 3 回までの衝撃を与えた.心室細動の発生率はボールの堅さに比例し,もっとも柔らかいボールがもっとも低いリスクに関連することが判明した(衝撃 26 回後の心室細動 2 例に対し,硬式野球ボールでは 23 回の衝撃後 8 例).
この心振盪の実験モデルは,この悲劇的なイベントの臨床プロフィールにかなり類似している.心室細動が起るか否かは衝撃の正確なタイミングに依存した.正規の硬式ボールと比較してより安全な軟式野球ボールは,心振盪のリスクを減少させる可能性がある.