ソタロール(Sotalol)治療による植込み型除細動器ショックの予防
Prevention of Implantable-Defibrillator Shocks by Treatment with Sotalol
A. PACIFICO AND OTHERS
除細動器の植込みを受けている患者は,多発するショックを予防するための補助的な抗不整脈療法を受けていることが多い.そこで,われわれは,このショックの予防を目的として,第 III 群抗不整薬作用を併せもった β 遮断薬であるソタロール(Sotalol)の有効性と安全性の検討を行った.
多施設共同試験において,左室駆出率(≦0.30 または>0.30)で層別した患者を,1 日用量が 160~320 mg のソタロール(151 例),または,これに対応するプラセボ(151 例)の二重盲検治療に無作為に割り付け,12 ヵ月間にわたって追跡調査を行った.イベントが発現するまでの時間を Kaplan–Meier 法で解析した.エンドポイントには,次の三つを用いた:どのような理由であれショックの最初の発現または何らかの原因による死亡,心室性不整脈による対象としているショックの最初の発現または何らかの原因による死亡,および上室性不整脈による対象以外のショックの最初の発現または何らかの原因による死亡.
二重盲検治療のコンプライアンスは,2 群で同程度であった.死亡例は,プラセボ群が 7 例,ソタロール群が 4 例であった.プラセボと比較して,ソタロールの治療は,何らかの原因による死亡またはどのような理由であれショックの最初の発現(リスクの低下,48%;ログランク検定で p < 0.001),何らかの原因による死亡または対象のショックの最初の発現(リスクの低下,44%; p = 0.007),あるいは何らかの原因による死亡または対象以外のショックの最初の発現(リスクの低下,64%; p = 0.004)のリスクの低下と関連していた.また,ソタロールは,何らかの原因によって発現したショックの平均(±SD)頻度も減少させた(1 年当りのショックの発現件数は1.43 ± 3.53 件,これに対してプラセボ群では 3.89 ± 10.65 件; p = 0.008).ソタロール群で認められた何らかの原因による死亡またはショックの最初の発現のリスクの低下には,駆出率が>0.30 の患者と≦0.30 の患者とのあいだで有意な差は認められなかった.
経口ソタロールは,心室機能の低下の有無にかかわらず,死亡または除細動器によるショックの最初の発現のリスクを低下させるのに安全かつ有効であった.