September 9, 1999 Vol. 341 No. 11
急性疾患の内科患者を対象とした静脈血栓塞栓症の予防におけるエノキサパリン(Enoxaparin)とプラセボの比較
A Comparison of Enoxaparin with Placebo for the Prevention of Venous Thromboembolism in Acutely Ill Medical Patients
M.M. SAMAMA AND OTHERS
静脈血栓塞栓症のリスクが示唆されている急性の内科的疾患患者における血栓予防法の有効性および安全性については,適切な評価ができるようにデザインされた試験での検討はされていない.
二重盲検試験において,年齢が 40 歳を超えていた 1,102 例の入院患者を,エノキサパリンの 40 mg,エノキサパリンの 20 mg,またはプラセボの 1 日 1 回,6~14 日間の連日皮下投与に無作為に割り付けた.これらの患者のほとんどは,集中治療室には入っていなかった.主要転帰は,試験 1~14 日目までに発症した静脈血栓塞栓症とした.この転帰の定義は,試験 6~14 日目まで(臨床的に顕在化した場合には,それ以前)に両脚の静脈造影法(またはドュープレックス超音波検査)によって検出された深部静脈血栓症,または各種検査で確定された肺塞栓症と定義した.追跡調査期間は 3 ヵ月間であった.
主要転帰は,866 例の患者で評価することができた.静脈血栓塞栓症の発症率は,エノキサパリンの 40 mg 投与群(5.5% [16/291 例])が,プラセボ投与群(14.9% [43/288 例])よりも有意に低かった(相対リスク,0.37;97.6%信頼区間,0.22~0.63;p<0.001).このエノキサパリンの 40 mg によって認められた有益性は,3 ヵ月目の時点においても持続していた.しかしながら,エノキサパリンの 20 mg 投与群(15.0% [43/287 例])とプラセボ群の比較では,静脈血栓塞栓症の発症率に有意な差は認められなかった.有害事象の発生率については,プラセボ群と,エノキサパリン群とのあいだには有意な差は認められなかった.試験 110 日目までに死亡した患者は,プラセボ群では 50 例(13.9%),20 mg 群では 51 例(14.7%),40 mg 群では 41 例(11.4%)であった;これらの差は有意な差ではなかった.
急性内科疾患の患者において,エノキサパリンの 1 日 40 mg 用量の皮下投与による血栓予防治療は,安全性には問題なく,静脈血栓塞栓症のリスクを低下させる.