軽症頭部外傷患者におけるコンピュータ断層撮影法の適応
Indications for Computed Tomography in Patients with Minor Head Injury
M.J. HAYDEL AND OTHERS
コンピュータ断層撮影法(CT)は,軽症頭部外傷患者に対するスクリーニング検査として広く使用されているが,その検査結果は正常であることが多い.そこで,CT を実施する必要のない軽症頭部外傷患者を鑑別するのに使用できるような臨床的基準の組み合せを開発し,その基準の有効性を確認するための試験を実施した.
この試験の第一段階では,軽症頭部外傷を負って,グラスゴー昏睡尺度(GCS)のスコアが正常かつ簡易神経検査の結果が正常であった 520 例の患者の臨床所見を記録した;その後,これらの患者には CT 検査が実施された.帰納的分割法を用いて,CT スキャンで異常が発見されたすべての患者を鑑別できるような 1 セットの基準を導き出した.第二段階では,この基準が CT スキャンの陽性結果を予測する感度と特異度の評価を 909 例の患者群で行った.
第一段階の 520 例の患者では,CT スキャンの結果が陽性であった患者は 36 例(6.9%)であった.この CT スキャンで陽性結果が得られたすべての患者が,以下の七つの所見の少なくとも一つを有していた;頭痛,嘔吐,年齢>60 歳,薬物中毒またはアルコール中毒,短期記憶の欠落,鎖骨よりも上部に外傷が存在することを示す身体所見,および痙攣.第二段階の 909 例の患者については,CT スキャンの結果が陽性であった患者は 57 例(6.3%)であった.この患者群では,七つの所見を併合した感度が 100%(95%信頼区間,95~100%)であった.また,CT スキャンで陽性結果が得られたすべての患者において,これらの所見が少なくとも一つ認められた.
軽症頭部外傷患者の評価では,CT 検査を特定の臨床所見が認められる患者に限定しても,問題はないと思われる.