September 28, 2000 Vol. 343 No. 13
慢性腎不全の小児の成人期身長に及ぼす成長ホルモン治療の効果
Effect of Growth Hormone Treatment on the Adult Height of Children with Chronic Renal Failure
D. HAFFNER AND OTHERS
成長ホルモン(GH)治療は,慢性腎不全(CRF)の低身長小児の成長を促す.しかし,この治療法が最終成人期身長をどの程度まで伸ばせるのかということについてはわかっていない.
成長ホルモン治療を受けた,当初は思春期前であった慢性腎不全の小児 38 例を,最終成人身長に達するまで平均で 5.3 年間追跡調査した.成長ホルモンの治療開始時における平均(±SD)年齢は 10.4±2.2 歳,平均骨年齢は 7.1±2.3 歳で,平均身長は標準身長よりも 3.1±1.2 SD 低かった.これらの小児にマッチし,成長ホルモンの治療を受けていなかった慢性腎不全の 50 例の小児を対照として用いた.
成長ホルモンの治療を受けた小児では持続的な取り戻し成長が得られたが,対照小児では成長障害が進行していった.成長ホルモンの治療を受けた小児の平均最終身長は,男児が 165 cm,女児が 156 cm であった.また,成長ホルモンの治療を受けた小児の平均最終成人期身長は,標準成人身長よりも 1.6±1.2 SD 低かったものの,成長ホルモンの治療開始時における標準身長よりも 1.4 SD 高かった(p<0.001).これに対して,成長ホルモンの治療を受けなかった小児の最終身長(標準よりも 2.1±1.2 SD 低かった)は,治療開始時における標準身長よりも 0.6 SD 低かった(p<0.001).成長ホルモンの治療を受けた小児では,思春期前の骨の成熟は加速したものの,この成長ホルモン治療によって思春期の急成長の期間が短縮したというようなことはなかった.身長の総増加量は,治療開始時における当初の標的身長との差および成長ホルモン療法の実施期間との正の関連が認められ,透析治療を受けながら過ごした観察期間の割合との負の関連も認められた.
慢性腎不全の小児に対する成長ホルモンの長期治療は,持続的な取り戻し成長を招来させるので,大多数の患者は標準の成人身長にまで達することができる.