April 17, 2003 Vol. 348 No. 16
血中鉛濃度と少女の思春期の遅延
Blood Lead Concentration and Delayed Puberty in Girls
S.G. Selevan and Others
環境中の鉛への曝露は,成長と内分泌機能の変化に関連している.このような曝露が思春期の発現に影響を与えるかどうかは明らかにされていない.
人種を自己申告または周囲の人が申告した横断的研究(第 3 回全米健康栄養調査;the third National Health and Nutrition Examination Survey)に参加した少女(8~18 歳の女性と定義)を対象に,血中鉛濃度と思春期の発現の関係を解析した:600 人は非ヒスパニック系白人,805 人は非ヒスパニック系のアフリカ系アメリカ人,781 人はメキシコ系アメリカ人であった.思春期は,初潮年齢および陰毛と乳房の発達に関するタナーステージに基づいて判定した.
鉛濃度の幾何平均値は 3 群とも 3 μg/dL(0.144 μmol/L)未満であった.年齢,人種,その他の因子で補正したところ,鉛濃度が 1 μg/dL(0.048 μmol/L)の場合と比較して,鉛濃度 3 μg/dL は身長の低下と関連していたが(P<0.001),体格指数および体重とは関連していなかった.血中鉛濃度 3 μg/dL は,アフリカ系アメリカ人およびメキシコ系アメリカ人少女において,乳房と陰毛の発達の有意な遅延と関連していた.この遅延はアフリカ系アメリカ人少女でもっとも顕著であった;この群では,血中鉛濃度 1 μg/dL と比較した,3 μg/dL と関連したタナーステージ 2,3,4,5 に達するまでの遅延は,乳房の発達ではそれぞれ 3.8,5.3,5.8,2.1 ヵ月であり,陰毛の発生ではそれぞれ 4.0,5.5,6.0,2.2 ヵ月であった;鉛濃度に関連した初潮年齢の遅延は 3.6 ヵ月であった.白人少女では,すべての思春期判定項目に,鉛濃度 3 μg/dL と関連した有意な遅延はみられなかった.
これらのデータは,環境中の鉛曝露により,少女の成長と思春期の発現が遅延する可能性を示唆しているが,前向き研究での確認が必要である.