November 8, 2007 Vol. 357 No. 19
一般的なウイルス抗原およびワクチン抗原に対する液性免疫の持続期間
Duration of Humoral Immunity to Common Viral and Vaccine Antigens
I.J. Amanna, N.E. Carlson, and M.K. Slifka
さまざまな病原体に対する防御免疫において,抗体反応の長期維持はきわめて重要である.しかし,液性免疫の持続期間と記憶 B 細胞が果たす役割については,ほとんど明らかにされていない.
被験者 45 例を対象に最長 26 年間にわたり縦断的分析を行い,ウイルス抗原(牛痘,麻疹,流行性耳下腺炎,風疹,水痘帯状疱疹ウイルス,エプスタイン・バーウイルス)と,非複製抗原(破傷風,ジフテリア)に特異的な抗体価を調べた.さらに,限界希釈法を用いて抗原特異的な記憶 B 細胞を調べ,記憶 B 細胞の頻度とそれぞれに対応する血清抗体価を比較 した.
抗ウイルス抗体反応はきわめて安定しており,半減期は,水痘帯状疱疹ウイルスの推定 50 年から,麻疹や流行性耳下腺炎などその他のウイルスの 200 年以上と幅があった.破傷風とジフテリア抗原に対する抗体反応は比較的急速に減弱し,推定半減期はそれぞれ 11 年と 19 年であった.B 細胞記憶は長期にわたり存続するが,検査を行った 8 種の抗原のうちの 5 種では,末梢の記憶 B 細胞数と抗体価とのあいだに有意な相関は認められなかった.
本研究は,10 年以上にわたって経過を縦断的に追跡した被験者における,複数の抗原に対する血清学的な記憶の定量分析である.複数曝露またはワクチンの反復接種が一般的な症例では,記憶 B 細胞の数は抗体価と相関しなかった.この所見から,末梢の記憶 B 細胞と抗体分泌プラズマ細胞は,独立して制御された細胞集団に相当し,防御免疫の維持に関して異なる役割を果たしている可能性が示唆される.