August 30, 2007 Vol. 357 No. 9
特発性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症からの回復
Reversal of Idiopathic Hypogonadotropic Hypogonadism
T. Raivio and Others
特発性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症は,性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の分泌や作用の先天的な障害に起因する治療可能なタイプの男性不妊症であり,嗅覚障害を伴う場合(カルマン症候群)と,嗅覚は正常な場合とがある.患者は,18 歳までに性的成熟が認められないか,または不完全である.これまで,特発性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症には生涯にわたる治療が必要だと考えられてきた.特発性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症からの回復がホルモン療法の中止後も持続した男性 15 例について報告する.
特発性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症からの持続的な回復の定義を,ホルモン療法の中止後にテストステロン濃度の成人正常値が認められることとした.
10 例の持続的な回復を後ろ向きに確認した.平均(±SD)6±3 週間の治療中断後,特発性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の患者 50 例のうち,5 例の持続的な回復を前向きに確認した.持続的な回復が認められた 15 例のうち,4 例で嗅覚障害が認められた.初回評価では,6 例で思春期が認められず,9 例では思春期が不完全であり,全例に GnRH 刺激による黄体形成ホルモン分泌の異常が認められた.15 例すべてが,男性化,生殖能,またはその両方を誘導するためのホルモン療法を過去に受けていた.性腺機能低下症からの回復が認められた男性では,内因性テストステロンの平均血中濃度は 55±29 ng/dL(1.9±1.0 nmol/L)から 386±91 ng/dL(13.4±3.2 nmol/L)へ上昇し(P<0.001),黄体形成ホルモン濃度は 2.7±2.0 IU/L から 8.5±4.6 IU/L へ上昇した(P<0.001).また,卵胞刺激ホルモン濃度は 2.5±1.7 IU/L から 9.5±12.2 IU/L へ上昇し(P<0.01),精巣容積は 8±5 mL から 16±7 mL へ増大した(P<0.001).黄体形成ホルモンの拍動性分泌および精子形成が確認された.
思春期が認められないか,または不完全である患者の約 10%で,嗅覚が正常な特発性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症およびカルマン症候群からの持続的な回復が治療中止後も認められた.したがって,低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の可逆性を評価するために,ホルモン療法を短期的に中断することは妥当といえる.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00392756)