January 31, 2008 Vol. 358 No. 5
メディケア集団における腹部大動脈瘤に対する血管内治療と開腹手術の比較
Endovascular vs. Open Repair of Abdominal Aortic Aneurysms in the Medicare Population
M.L. Schermerhorn and Others
腹部大動脈瘤に対する血管内治療の周術期の死亡率および合併症率は,開腹手術に比べて低いことが無作為化試験で示されている.しかし,より長期の生存率は 2 つの手技で同等であった.現時点では,この 2 つの方法を比較した長期的な住民ベースのデータは存在しない.
2001~04 年に治療を受けたメディケア受給者の,傾向スコアをマッチさせたコホートを対象として,腹部大動脈瘤に対する血管内治療と開腹手術について,周術期の死亡率および合併症率,長期の生存率,破裂率,再介入率を比較検討した.追跡調査を 2005 年まで行った.
腹部大動脈瘤に対し治療を受けた患者でマッチした患者は,各コホート 22,830 例であった.患者の平均年齢は 76 歳であり,女性は約 20%であった.周術期死亡率は,血管内治療後のほうが開腹手術後よりも低く(1.2% 対 4.8%,P<0.001),死亡率の低下幅は年齢に伴い増加した(67~69 歳では 2.1%の差,85 歳以上では 8.5%の差,P<0.001).生存曲線は 3 年後まで収束しなかったが,長期生存率は両コホートで同等であった.4 年後までの破裂率は,血管内治療コホートのほうが開腹手術コホートよりも高く(1.8% 対 0.5%,P<0.001),腹部大動脈瘤に関連した再介入率(9.0% 対 1.7%,P<0.001)も同様に高かったが,ほとんどはより小さな介入であった.これに対し,手術に関連した合併症に対する 4 年後までの手術率は,開腹手術を受けた患者のほうが高く(9.7%,血管内治療を受けた患者では 4.1%;P<0.001),腸閉塞または腹壁ヘルニアによる手術を伴わない入院率についても同様に高かった(14.2% 対 8.1%,P<0.001).
開腹手術に比べ,腹部大動脈瘤に対する血管内治療では,短期的な死亡率および合併症率が低かった.この生存に対する利益は,高齢患者のほうが長期に及ぶ.腹部大動脈瘤に関連して後に再介入が行われる頻度は血管内治療後のほうが高かったが,これは開腹手術に関連した再介入および開腹手術後の入院の増加で相殺される.