ミクロネシア連邦ヤップ島におけるジカウイルス疾患の集団発生
Zika Virus Outbreak on Yap Island, Federated States of Micronesia
M.R. Duffy and Others
2007 年にヤップ島の医師が,発疹,結膜炎,関節痛を特徴とする疾患の集団発生を報告した.一部の患者の血清中にデング熱ウイルスに対する IgM 抗体が認められたが,報告された疾患は過去に発見されたデング熱とは臨床的に異なると考えられた.コンセンサスプライマーを使用したその後の検査で,患者の血清中にジカウイルス RNA が検出されたが,デング熱ウイルスやその他のアルボウイルスの RNA は検出されなかった.ジカウイルス疾患はこれまで集団発生の例がなく,症例は 14 例しか報告されていない.
患者から血清検体を採取し,臨床的徴候・症状について聴取した.ジカウイルス疾患の診断は,血清中のジカウイルス RNA またはジカウイルスに対する特異的中和抗体応答の検出により確定した.ジカウイルスに対する IgM 抗体を有し,交差反応の可能性のある中和抗体応答が認められた患者は,ジカウイルス疾患の疑い例として分類した.世帯調査を実施し,ジカウイルスに対する IgM 抗体を有する島民の割合を推定し,ジカウイルスを媒介する可能性のある蚊の同定を試みた.
確定例 49 例と疑い例 59 例を同定した.患者はヤップ島の 10 の自治区のうち 9 自治区に居住していた.主な症状は,発疹,発熱,関節痛,結膜炎であった.ジカウイルスを原因とする入院,出血症状,死亡は報告されなかった.3 歳以上の島民の 73%(95%信頼区間 68~77)が,最近ジカウイルスに感染したと推定された.同定された蚊の種でもっとも多かったのは,ヤブカ属の Aedes hensilli であった.
今回のミクロネシアにおけるジカウイルス疾患の集団発生は,ジカウイルスがアフリカ,アジア以外の地域に伝播したことを示している.ほとんどの患者は軽症であったが,医師と公衆衛生担当者は,ジカウイルスの伝播がさらに拡大するリスクを認識しておく必要がある.