November 26, 2009 Vol. 361 No. 22
自己免疫性膵炎に関連する新たな自己抗体の同定
Identification of a Novel Antibody Associated with Autoimmune Pancreatitis
L. Frulloni and Others
自己免疫性膵炎は膵機能不全にいたる炎症過程が特徴であるが,原因は明らかにされていない.自己免疫との関連が示唆されているにもかかわらずいまだ確証はなく,その病因はほとんど解明されていない.
病因に関連する標的自己抗原を同定するため,自己免疫性膵炎患者 20 例のプール IgG を用いてランダムペプチドライブラリーのスクリーニングを行った.患者の血清検体でペプチド特異的抗体を検出した.
検出されたペプチドのうち,ペプチド AIP1-7 が,自己免疫性膵炎患者 20 例中 18 例,膵癌患者 40 例中 4 例の血清検体に検出された.健常対照者の血清検体では検出されなかった.このペプチドは,Helicobacter pylori のプラスミノーゲン結合蛋白(PBP)と,膵腺房細胞で高度に発現されている酵素であるユビキチンリガーゼ E3 n-リコグニン 2(ubiquitin-protein ligase E3 component n-recognin 2:UBR2)のアミノ酸配列と相同性を示した.PBP ペプチドに対する抗体は,自己免疫性膵炎患者 20 例中 19 例(95%),膵癌患者 40 例中 4 例(10%)で認められたが,アルコール性慢性膵炎患者,膵管内乳頭粘液性腫瘍患者では認められなかった.この結果は,検証群とした別の 85 例の患者群でも確認され,自己免疫性膵炎患者 15 例中 14 例(93%),膵癌患者 70 例中 1 例(1%)で陽性であった.最初の抗体検出群と検証群を合わせると,抗 PBP ペプチド抗体は自己免疫性膵炎患者 35 例中 33 例(94%),膵癌患者 110 例中 5 例(5%)で陽性であった.
今回同定された抗体は,ほとんどの自己免疫性膵炎患者に認められた.しかし,一部の膵癌患者にも認められたため,この抗体の検査は自己免疫性膵炎と膵癌の鑑別法として不十分である.