November 25, 2010 Vol. 363 No. 22
同種造血細胞移植後の死亡率の低下
Reduced Mortality after Allogeneic Hematopoietic-Cell Transplantation
T.A. Gooley and Others
過去 10 年で,移植患者に対する医療は進歩している.われわれは,この進歩により移植後の転帰が改善しているかどうかを調査するための研究を行った.
シアトルのわれわれの施設で 1993~97 年に初回同種移植を受けた 1,418 例と,2003~07 年に初回同種移植を受けた 1,148 例を対象に,全死亡率,無再発死亡率,悪性疾患の再発,移植による重大な合併症(移植片対宿主病 [GVHD],肝臓・腎臓・肺の合併症,感染性合併症を含む)の発現頻度と重症度を解析した.回帰モデルで移植前死亡率評価(PAM)スコアの構成項目を用いて,移植時の疾患の重症度について補正した.
PAM スコアの構成項目による補正後,2003~07 年では 1993~97 年に比べ,200 日の時点での無再発死亡率(60%の低下)と全体の無再発死亡率(52%の低下),悪性疾患が再発または進行した割合(21%の低下),全死亡率(41%の低下)に有意な低下が認められた.骨髄破壊的前処置を受けた患者のみを対象に解析した場合にも同様の結果が得られた.重度の GVHD のリスク,ウイルス・細菌・真菌の感染に起因した疾患,肝臓・腎臓・肺の損傷についても,有意な減少が明らかとなった.
過去 10 年で,同種造血細胞移植に関連した死亡の危険が大幅に低下していると同時に,長期生存率が上昇していることが明らかとなった.転帰の改善は,臓器損傷,感染症,重度の急性 GVHD の減少に関連したものであると思われる.(米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.)