高リスク患者に対する経カテーテル大動脈弁置換術と開胸大動脈弁置換術の比較
Transcatheter versus Surgical Aortic-Valve Replacement in High-Risk Patients
C.R. Smith and Others
大動脈弁狭窄症でリスクが高く,開胸大動脈弁置換術の適応とならない患者において,経カテーテル大動脈弁置換術による死亡率の低下が示されている.しかし,高リスクであるが開胸手術の適応となる患者を対象とした両手技の無作為化比較試験は行われていない.
25 施設で,高リスクの重度大動脈弁狭窄症患者 699 例を,バルーン拡張型ウシ心膜弁を用いた経カテーテル大動脈弁置換術を行う群(経大腿もしくは経心尖)と開胸大動脈弁置換術を行う群のいずれかに無作為に割り付けた.主要エンドポイントは,術後 1 年での全死因死亡とした.主要仮説は,経カテーテル大動脈弁置換術は開胸大動脈弁置換術に対し非劣性である,とした.
術後 30 日での全死因死亡率は,経カテーテル群 3.4%,開胸手術群 6.5%であった(P=0.07).術後 1 年ではそれぞれ 24.2%と 26.8%であり(P=0.44),経カテーテル群で 2.6 パーセントポイント低かった(95%信頼区間上限値 3.0 パーセントポイント,事前に規定したマージン 7.5 パーセントポイント,非劣性について P=0.001).術後 30 日での重症脳卒中の発生率は,経カテーテル群 3.8%,開胸手術群 2.1%であり(P=0.20),術後 1 年ではそれぞれ 5.1%と 2.4%であった(P=0.07).術後 30 日での主要血管合併症の発生頻度は,経カテーテル群のほうが有意に高かった(11.0% 対 3.2%,P<0.001).開胸手術群でより高頻度にみられた有害事象は,重大な出血(9.3% 対 19.5%,P<0.001),心房細動の新規発生(8.6% 対 16.0%,P=0.006)などであった.術後 30 日で症状の改善が認められた患者は経カテーテル群のほうが多かったが,術後 1 年までに群間差は有意ではなくなった.
高リスクの重度大動脈弁狭窄症患者に対する大動脈弁置換において,経カテーテル手技と開胸手術とで 1 年生存率は同程度であったが,周術期のリスクに重要な差が認められた.(Edwards Lifesciences 社から研究助成を受けた.Clinical Trials.gov 番号:NCT00530894)