メキシコとブラジルにおけるロタウイルスワクチン接種の腸重積リスクと健康上の利益
Intussusception Risk and Health Benefits of Rotavirus Vaccination in Mexico and Brazil
M.M. Patel and Others
以前に開発されたロタウイルスワクチン RotaShield は,承認後のサーベイランスで接種者 10,000 人あたり 1 例の割合で腸重積を引き起こすことが示されたため,われわれは,メキシコとブラジルにおいて,新規の 1 価ロタウイルスワクチン(RV1)が乳児に対する定期予防接種後の腸重積と関連するかどうかを検討した.
症例集積法と症例対照法を用いて,RV1 と腸重積との関連を検討した.69 病院(メキシコ 16 病院,ブラジル 53 病院)での能動的サーベイランスにより腸重積をきたした乳児を同定し,同一地域の年齢をマッチさせた乳児を対照として登録した.ワクチン接種日は予防接種カードまたは診療所の記録で確認した.
615 例(メキシコ 285 例,ブラジル 330 例)と対照 2,050 例を登録した.メキシコの乳児では,RV1 の初回接種後 1~7 日に腸重積リスクが上昇することが,症例集積法(発生率比 5.3,95%信頼区間 [CI] 3.0~9.3)と症例対照法(オッズ比 5.8,95% CI 2.6~13.0)の両方で確認された.ブラジルの乳児では,初回接種後には有意なリスクは認められなかったが,2 回目接種後 1~7 日に,メキシコの乳児での初回接種後の上昇に比べると小さいものの,1.9~2.6 倍のリスク上昇が認められた.メキシコとブラジルを合わせて,年間で腸重積 96 例(メキシコ 約 51,000 人あたり 1 例,ブラジル 約 68,000 人あたり 1 例)と,腸重積による死亡 5 例の超過発生が RV1 に起因した.しかし,RV1 によって,これら 2 ヵ国では毎年,下痢による入院約 80,000 件,死亡約 1,300 件が予防された.
RV1 は,接種児約 51,000 人あたり 1 例,約 68,000 人あたり 1 例の割合で腸重積の短期リスクに関連した.ワクチン接種によって回避された死亡・入院の絶対数は,ワクチン接種に関連した可能性のある腸重積例数をはるかに上回った.(GAVI アライアンス,米国保健福祉省から一部研究助成を受けた.)