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September 28, 2023 Vol. 389 No. 13

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ICU における早期静脈栄養を行わない厳格な血糖コントロール
Tight Blood-Glucose Control without Early Parenteral Nutrition in the ICU

J. Gunst and Others

背景

集中治療室(ICU)患者に対する厳格な血糖コントロールに関しては,無作為化比較試験からは利益と害の両方が示されている.この不一致は,早期静脈栄養の実施と,インスリン誘発性重症低血糖の発生率の違いで説明される可能性がある.

方 法

患者を,ICU 入室時に非制限的な血糖コントロール(血糖値が 215 mg/dL [11.9 mmol/L] を超えた場合にのみインスリンを開始する)を行う群と,厳格な血糖コントロール(LOGIC インスリンアルゴリズムを用いた目標血糖値 80~110 mg/dL [4.4~6.1 mmol/L])を行う群に無作為に割り付けた.静脈栄養は両群とも 1 週間行わなかった.プロトコールの遵守は血糖の指標から判断した.主要転帰は,ICU での治療を必要とした期間とし,ICU から生存退室するまでの期間に基づいて算出した.死亡を競合リスクとして扱った.安全性転帰は 90 日死亡率とした.

結 果

無作為化された 9,230 例のうち,4,622 例が非制限的血糖コントロール群,4,608 例が厳格な血糖コントロール群に割り付けられた.朝の血糖値の中央値は,非制限的な血糖コントロール群では 140 mg/dL(四分位範囲 122~161),厳格な血糖コントロール群では 107 mg/dL(四分位範囲 98~117)であった.重症低血糖は,非制限的コントロール群では 31 例(0.7%),厳格コントロール群では 47 例(1.0%)に発生した.ICU での治療を必要とした期間は 2 群で同程度であった(厳格な血糖コントロールのほうが生存退室が早くなるハザード比 1.00,95%信頼区間 0.96~1.04,P=0.94).90 日死亡率も同程度であった(非制限的な血糖コントロール 10.1%,厳格な血糖コントロール 10.5%;P=0.51).事前に規定した 8 項目の副次的転帰の解析から,新たな感染症の発生率,呼吸補助の時間,血行動態補助の時間,生存退院までの期間,ICU 内死亡,院内死亡は 2 群で同程度であったが,重症急性腎障害と胆汁うっ滞性肝機能障害は,厳格な血糖コントロールのほうが少ない傾向にあることが示唆された.

結 論

早期静脈栄養を受けていない重症患者において,厳格な血糖コントロールは,ICU での治療を必要とした期間と死亡に影響を及ぼさなかった.(フランダース研究基金ほかから研究助成を受けた.TGC-Fast 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03665207)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 389 : 1180 - 90. )