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July 13, 2023 Vol. 389 No. 2

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重症外傷に対する病院到着前のトラネキサム酸投与
Prehospital Tranexamic Acid for Severe Trauma

The PATCH-Trauma Investigators and the ANZICS Clinical Trials Group

背景

重大な外傷を負い,外傷性凝固障害が疑われ,高度外傷治療システムの治療を受けている患者において,病院到着前のトラネキサム酸投与により,良好な機能的転帰を伴う生存の可能性が高まるかどうかは明らかでない.

方 法

重大な外傷を負い,外傷性凝固障害のリスクがある成人を,トラネキサム酸を投与する群(入院前に 1 g をボーラスで静脈内投与し,病院到着後に 1 g を 8 時間かけて静脈内投与する)と,マッチさせたプラセボを投与する群に無作為に割り付けた.主要転帰は,受傷後 6 ヵ月の時点での良好な機能的転帰を伴う生存とし,拡張グラスゴー転帰尺度(GOS-E)を用いて評価した.GOS-E のレベルは 1(「死亡」)から 8(「上位の良好な回復」[損傷に関連する問題がない])までである.良好な機能的転帰を伴う生存は,GOS-E レベルが 5(「下位の中等度の障害」)以上であることと定義した.副次的転帰は,受傷後 28 日以内,6 ヵ月以内の全死因死亡などとした.

結 果

オーストラリア,ニュージーランド,ドイツの 15 の救急医療サービスによって,計 1,310 例が登録された.このうち 661 例がトラネキサム酸群,646 例がプラセボ群に割り付けられた.3 例は試験群の割付けが不明であった.6 ヵ月の時点での良好な機能的転帰を伴う生存は,トラネキサム酸群では 572 例中 307 例(53.7%),プラセボ群では 559 例中 299 例(53.5%)に認められた(リスク比 1.00,95%信頼区間 [CI] 0.90~1.12,P=0.95).受傷後 28 日の時点で,トラネキサム酸群の 653 例中 113 例(17.3%)と,プラセボ群の 637 例中 139 例(21.8%)が死亡していた(リスク比 0.79,95% CI 0.63~0.99).6 ヵ月の時点では,トラネキサム酸群の 648 例中 123 例(19.0%)と,プラセボ群の 629 例中 144 例(22.9%)が死亡していた(リスク比 0.83,95% CI 0.67~1.03).血管閉塞性イベントをはじめとする重篤な有害事象の件数に,群間で意味のある差はなかった.

結 論

重大な外傷を負い,外傷性凝固障害が疑われ,高度外傷治療システムの治療を受けている成人に対し,トラネキサム酸を病院到着前に投与し,その後 8 時間かけて静脈内投与しても,6 ヵ月の時点での良好な機能的転帰を伴う生存者数は,プラセボを投与した場合よりも多くなることはなかった.(オーストラリア国立保健医療研究評議会ほかから研究助成を受けた.PATCH-Trauma 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02187120)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 389 : 127 - 36. )