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November 16, 2023 Vol. 389 No. 20

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AVP 欠損症の診断にアルギニンで刺激したコペプチンを用いた場合と高張食塩水で刺激したコペプチンを用いた場合との比較
Arginine or Hypertonic Saline–Stimulated Copeptin to Diagnose AVP Deficiency

J. Refardt and Others

背景

アルギニンバソプレシン(AVP)欠損症と原発性多飲症の鑑別は困難である.AVP 欠損症の診断には高張食塩水で刺激したコペプチンが用いられており,精度は高いものの,ナトリウムの厳密なモニタリングを必要とする.アルギニンで刺激したコペプチンは,診断精度は同程度であることが示されており,検査プロトコールがより簡易である.しかし,AVP 欠損症の診断にアルギニンで刺激したコペプチンを用いた場合と,高張食塩水で刺激したコペプチンを用いた場合とを直接比較したデータはない.

方 法

国際共同非劣性試験で,多飲症と低張性多尿を有する成人患者と,AVP 欠損症と診断されている成人患者を,1 日は高張食塩水刺激による診断評価を行い,別の日はアルギニン刺激による診断評価を行うように割り付けた.AVP 欠損症または原発性多飲症の最終診断は,2 人の内分泌科医が独立に,臨床情報,治療への反応,高張食塩水負荷試験の結果を用いて行った.主要転帰は,事前に規定したコペプチンのカットオフ値に基づく全体的な診断精度とし,カットオフ値は,アルギニンでは注入開始後 60 分の時点で 3.8 pmol/L,高張食塩水ではナトリウム濃度が 149 mmol/L を超えた時点で 4.9 pmol/L とした.

結 果

2 つの検査を受けた 158 例のうち,69 例(44%)が AVP 欠損症と診断され,89 例(56%)が原発性多飲症と診断された.診断精度は,アルギニンで刺激したコペプチンが 74.4%(95%信頼区間 [CI] 67.0~80.6),高張食塩水で刺激したコペプチンが 95.6%(95% CI 91.1~97.8)であった(推定差 -21.2 パーセントポイント,95% CI -28.7~-14.3).有害事象は両検査とも大部分が軽度であった.患者の 72%が,高張食塩水よりもアルギニンによる検査を好んだ.アルギニンで刺激したコペプチンの値は,3.0 pmol/L 以下の場合に AVP 欠損症が特異度 90.9%(95% CI 81.7~95.7)で診断され,5.2 pmol/L 超の場合に原発性多飲症が特異度 91.4%(95% CI 83.7~95.6)で診断された.

結 論

多尿多飲症候群の成人患者において,AVP 欠損症の診断精度は,高張食塩水で刺激したコペプチンを用いた場合のほうが,アルギニンで刺激したコペプチンを用いた場合よりも高かった.(スイス国立科学財団から研究助成を受けた.CARGOx 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03572166)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2023; 389 : 1877 - 87. )