December 21, 2023 Vol. 389 No. 25
ドキシサイクリンによる女性の性感染症の予防
Doxycycline Prophylaxis to Prevent Sexually Transmitted Infections in Women
J. Stewart and Others
ドキシサイクリンによる曝露後予防(PEP)は,シスジェンダー男性とトランスジェンダー女性の性感染症(STI)を予防することが示されているが,シスジェンダー女性を対象とした試験のデータは不足している.
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)曝露前予防を行っている 18~30 歳のケニア人女性を対象として,ドキシサイクリン PEP(コンドームなしの性交後 72 時間以内にドキシサイクリンヒクラート 200 mg を服用)と,標準治療とを比較する無作為化非盲検試験を行った.主要エンドポイントは,クラミジア(Chlamydia trachomatis),淋菌(Neisseria gonorrhoeae),梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)のいずれかへの新規感染とした.ドキシサイクリンの使用を客観的に評価するため,毛髪検体を 3 ヵ月ごとに採取した.
449 例が無作為化され,224 例がドキシサイクリン PEP 群,225 例が標準治療群に割り付けられた.参加者を 3 ヵ月ごとに,計 12 ヵ月間追跡した.新規 STI は計 109 件発生し(ドキシサイクリン PEP 群 50 件 [25.1/100 人年],標準治療群 59 件 [29.0/100 人年]),発生率に有意な群間差はなかった(相対リスク 0.88,95%信頼区間 [CI] 0.60~1.29,P=0.51).この 109 件のうち,85 件(78.0%)はクラミジアが原因であった(ドキシサイクリン PEP 群 35 件,標準治療群 50 件;相対リスク 0.73;95% CI 0.47~1.13).試験担当医師がドキシサイクリンに関連すると考えた重篤な有害事象はなく,HIV への新規感染もなかった.ドキシサイクリン PEP 群から無作為に選択した 50 例の毛髪 200 検体のうち,ドキシサイクリンは 58 検体(29.0%)から検出された.淋菌陽性者の分離株はすべて,ドキシサイクリン耐性であった.
シスジェンダー女性では,ドキシサイクリン PEP により,STI の発生率が標準治療よりも有意に低下することはなかった.毛髪検体の解析によると,ドキシサイクリン PEP 群に割り付けられた参加者におけるドキシサイクリン PEP の使用は少なかった.(米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.dPEP 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT04050540)